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羽生結弦のコメント、抑制の効いた観客…「大会を成功させたい」という思いにあふれた2020年フィギュア界
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byNaoki Nishimura/AFLO
posted2021/01/25 11:01
20年12月26日、全日本選手権で表彰台に立った宇野昌磨、鍵山優真とともに場内を周る羽生
原動力は「試合で滑りたい、演技がしたい」
全日本選手権では、選手やコーチたち、さらに大会にかかわる人がPCR検査を受け、大会の前に検査結果の確認をとった。
これら、よく知られている事実にとどまらず、感染しない、させないことを意識し、過ごした毎日があった。
その積み重ねが、数々の大会を成り立たせた。
原動力は、「試合をしたい」「試合で滑りたい、演技がしたい」であったろう。
その場が得られることが何よりもうれしく、そしてサポートしてくれた人たちに、自然に感謝を覚えた。
フィギュアスケートでは観客のトラブルがなかった
例えば、宇野昌磨の言葉。
「今までは大会に出ることがずっと当たり前だと思って練習してきたので、こういう状況になって、初めて開催してもらえることへの感謝を覚えました。今回、大会に出られたことがほんとうによかったですし、単純に楽しかったです」
誰もが一生懸命取り組んでこぎつけたNHK杯、全日本選手権を無事終えるには、さらに必要なパーツがあった。
他のプロスポーツでは試合のとき、何度かトラブルが起きた。事前の要請に反し、大声をあげる観客がいて中断される、審判が場内アナウンスで注意することがあったのだ。
有観客試合として開催されたフィギュアスケートの2つの大会にそのような光景はなかった。大きな拍手やスタンディングオベーションで称え、でも声援はなかった。
その抑制は選手や関係者に感染者を出さないように、大会を成功させたいという思いではなかったか。