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羽生結弦のコメント、抑制の効いた観客…「大会を成功させたい」という思いにあふれた2020年フィギュア界
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byNaoki Nishimura/AFLO
posted2021/01/25 11:01
20年12月26日、全日本選手権で表彰台に立った宇野昌磨、鍵山優真とともに場内を周る羽生
車で片道10時間近くかけて選手の待つリンクへ通った振付師
他競技の取材での見聞も踏まえて言うと、コロナ禍にあってフィギュアスケートのそれぞれの立場にいる人たちに感じられたのは、コロナとの向き合い方の真剣さだ。
例えば振り付けの際、自身も感染しない、選手にも感染を及ぼさないという決意のもとに、公共交通機関を一切使わず、車で片道10時間近くかけて選手の待つリンクへ通った振付師がいる。
4月から5月にかけての緊急事態宣言では必要な場合を除き、自粛を求められたが、三原舞依は忠実に守った。
「ずっと家にいました」
家で過ごしつつ、復帰を見据えて準備していた。
「柔軟はどんなときでも毎日やっていて、体幹トレーニングも、ほんとうに基礎なんですけど、1つひとつ」
羽生結弦のコメントも大きな役割を果たした
それぞれに、真摯に向き合っていた。それは2人に限らない。
7月に出されたあるコメントも、大きな役割を果たした。
「世界での感染者数の増加ペースが衰えておらず、その感染拡大のきっかけになってはいけないと考え、私が自粛し、感染拡大の予防に努めるとなれば、感染拡大防止の活動の一つになりえると考えております」
羽生結弦のグランプリシリーズ欠場の発表とともに寄せられたコメントの一節である。
自身が感染するリスクを考慮しつつ、「拡げない」決意が込められていた。
それは間違いなく、感染予防への意識をあらためて高めるのにつながった。
いざ大会でも、多くのスタッフが感染防止に努めた。NHK杯や全日本選手権では、観客席を除菌する光景があった。