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東京五輪になぜ代替案も出ない? 「森喜朗会長はタイタニック号の船長」海外から“悲観論”が続出
posted2021/01/28 06:00
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
KYODO
新型コロナウイルスの第3波が猛威を振るう中で、7月からの開催が予定されている東京オリンピック・パラリンピックへの風当たりがどんどん強くなってきている。
年明けに共同通信が行った世論調査では「中止すべきだ」が35.3%、「再延期すべきだ」が44.8%で、7月開催への反対意見は全体の80.1%まで激増している。
1月7日には東京都と近隣3県に緊急事態宣言が出され、13日には大阪府や福岡県など7府県に追加発令されるなど、感染爆発への危機感は日増しに強まってきている。7月までにその状況が劇的に好転すると考える国民はほとんどいない。それがこの世論調査の答えである。
ところが肝心の日本政府、東京都、そして大会組織委員会からは中止はもちろん、無観客開催などの代替案すら出てきていない。
海外からも7月開催には悲観論が続出
「沈みゆく船の船長なのだろう」と大会組織委員会の森喜朗会長を皮肉ったのは1月12日の米セーリング専門ニュースサイト「スカットルバット」だった。
同サイトは森会長の「もし心の中に多少でも迷いがあれば、すべてに影響してくる」「長い夜も必ず朝が来る。一丸となって、この最大の難関を突破するよう頑張りましょう」という年頭の挨拶を紹介。「我々が昨年から学んだことがあるとすれば、それは『コロナを過小評価するな』ということだ」と警鐘を鳴らした上で、「(森会長の挨拶は)タイタニック号のスミス船長の言葉を想起させる。船を氷海へと導く前、彼は『たとえ神でさえも、この船を沈めることはかなわない』と語った」と皮肉たっぷりに報じた。
同じ日にはAP通信も「組織委員会の楽観主義も、先週、菅義偉首相が東京都と近隣3県に緊急事態宣言を発令したことで疑問視されている」と報道。国内だけではなく、海外からも7月開催には悲観論が続出しているのだ。
もちろんそれでも大会組織委が自分たちから開催断念を言えるはずはない。タイタニックの船長に擬えられるなど批判の矢面に立たされている森委員長は、お気の毒としか言いようがない。