熱狂とカオス!魅惑の南米直送便BACK NUMBER
無観客では「多額の経済的損失が…」と警鐘を鳴らす記者も ブラジルは東京五輪開催の可否をどう報じた?
posted2021/01/28 11:01

リオ五輪ではネイマールらを擁した男子サッカーで金メダルを獲得したブラジル
text by

沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph by
Shinya Mano/JMPA
21日夜(ブラジル時間)の英タイムズ紙による「日本政府内部で東京五輪・パラリンピック中止を決め、2032年開催を目指す」という報道は、ブラジルでも反響を呼んだ。
この報道の直後、知人のブラジル人スポーツ記者から日本国内での反応を聞かれた。とりあえず、橋本聖子五輪相の「そういう報道があったことは承知しておりません」、「政府としては、全力で今夏の開催に努力していきたい」というコメントを伝えた。
翌22日のテレビのスポーツニュースや社会ニュースではこの話題が取り上げられて「日本政府、IOC、JOCは記事の内容を全面的に否定し、開催を明言した」と伝えていた。
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ただし、常日頃、日本の社会、政治状況が逐一報じられているわけではなく、日本がかなり切迫した状況にあることはほとんど伝わっていないという印象を受けた。
南米諸国では五輪への関心は高くない
世界有数の五輪人気を誇る日本からは想像しにくいだろうが、そもそもブラジルをはじめとする南米諸国では国民の五輪への関心は高くない。「スポーツと言えばフットボール」という国がほとんど。ブラジルは男女のバレーボール、ビーチバレーなども世界トップクラスだが、フットボールと比べると競技人口も一般的な関心もずっと落ちる(リオ五輪ではネイマールらを擁した男子サッカーが初の金メダルを獲得)。
2016年に南米初となるリオ五輪を開催するに際しては、多くの競技施設を新たに建設したり、大幅に改修する必要があった。しかし、実はかなり早い時期から、大会終了後、多くの競技施設が「ホワイト・エレファント」(無用の長物)と化すことが危惧されていた。
一部のスポーツ関係者は「リオ五輪でブラジル選手が活躍して注目を集めたら、関心が高まって競技人口も増えるのではないか」という希望的観測を唱えたが、そうはならなかった。
リオ五輪後、競技施設の一部は廃墟化
ブラジルは、五輪前もその後も「スポーツといえばフットボール」の国のまま。リオ五輪用に建設された競技施設の多くが有効利用されておらず、一部は全く使用されず廃墟と化してしまっている。