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“4人に1人が死ぬ山”K2の冬季初登頂 「ギャラも出ないのに山に登る意味はない」ネパール人が本気になった
posted2021/01/25 18:00
text by
森山憲一Kenichi Moriyama
photograph by
Getty Images
2021年1月16日、エベレスト(8848m)に次ぐ世界第2位の高峰、K2(8611m)が初めて冬季に登られた。世界には8000m峰が14山あるが、K2をのぞく13山はすでに冬季にも登られている。「K2冬季登頂」は、ヒマラヤ登山に残された数少ない大物課題のひとつだったのである。
K2は標高こそ世界2位だが、登山の困難度ではエベレストをはるかにしのぐ。これまで山頂に立った人の数はのべ400人弱。1万人ほどが登っているエベレストと比べると、わずか25分の1にすぎない。
一方で死亡率(死亡者数/登頂者数)は高く、これまでの統計によれば23%ほどにものぼる。ほかの多くの8000m峰では10%以下であるのに対して、K2での死亡率は際だって高い。「最難の8000m峰」といわれるゆえんは数字でも裏付けられている。
冬のK2は風速50m/s、気温-50℃
しかも以上は、主に通常登られる夏のシーズンでの話である。
冬のK2では、風速50m/sの風が吹き荒れ、気温は零下50℃ほどにも達するという。夏に比べて気象条件ははるかに厳しい。であるだけに、「人類がどこまでできるのか」を試す場として、30年以上にわたって屈強な登山家が挑戦を繰り返してきた歴史がある。それでも、これまでの最高到達点は標高7650mにとどまっていたのである。
K2の世界最年少登頂記録(2006年/21歳)を持つ青木達哉はこう語る。
「冬のK2なんて想像しただけで苦しいです。武者震いする余裕もないくらい厳しい登山になるでしょうね。クライマーとしては失格発言になりますが、できれば自分はその場にいたくないと思うほどです」
「“オール”ネパール人」という大きなニュース
さて、K2の冬季登頂が果たされたというだけでも登山界では大きなニュースだったわけだが、もうひとつの大きな、いや、むしろ、冬季登頂よりも大きな意味が今回の登山にはあった。
それは、登頂したのが、シェルパを中心とした“オール”ネパール人チームだったことである。