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50歳羽生善治九段に聞く「将棋はスポーツ?」問題 34年前から実感していた“棋士とアスリートの共通点”とは
text by
Number編集部Sports Graphic Number
photograph byMasaru Tatsuki
posted2021/01/07 17:03
インタビューは竜王戦第5局を終えた数日後に行われた
「テニスです。テニスってトータルのゲームポイントで勝っても、試合は負けることがありますよね。で、サービスゲームを交互にやっていくとか、シングルスの場合、ひとりで流れを変えることに努力したりとか、そういうところが、すごく似てるし役に立ちますね。それに実力の差がないときに、どうやって差をつけるかっていうところも似てる。将棋の世界も、トップの人たちは、差がほとんどないんですよ。その、ない差をどうやってつけるかっていうのが、いちばん大きな、みんなが考えてる課題だと思うんです」
将棋はスポーツか? 棋士はアスリートか?
今回、棋士をアスリートとして描いた将棋特集第2弾「藤井聡太と将棋の冒険」では、8年ぶり(前回は801号)に羽生のインタビューが実現した。1勝4敗で敗れた竜王戦の詳細をはじめ、印象深い話をたくさん聞くことができたが、こんな質問にも、よどみなく答えてくれた。
――将棋はスポーツか、棋士はアスリートか、という議論についてはどのような見解でしょうか。
「アービター(審判)もコーチもいるチェスは頭脳スポーツにカテゴライズされていますけど、江戸時代の家元制度から続く将棋との歴史的背景の違いはあります。スポーツも文化的な側面を併せ持つので、どちらにスポットを当てるかということでしょう。将棋は肉体のパフォーマンスが結果に反映するわけではないですが、長時間の対局で消耗し疲労する棋士とアスリートとの共通点はあると思ってます。肉体的な要素は16歳で初めて順位戦を夜中まで指した時から感じてきましたから」
自身のアスリート性を少なくとも34年前に実感していたという羽生は、それからずっと大舞台に立ち続け、熾烈な戦いを重ねてきた。その驚異的な息の長さをもたらす力の源泉は一体どこにあるのか。藤井聡太二冠をはじめとする次世代の台頭に思うことは、そして自身の未来は――。時に笑顔を浮かべ、時に真剣な眼差しで語られた、史上最高の棋士の肉声は、どこまでも透き通っていた。