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地獄で見た光 藤井聡太、三段リーグ敗戦譜~勝者たちの回想~

posted2021/01/08 07:00

 
地獄で見た光 藤井聡太、三段リーグ敗戦譜~勝者たちの回想~<Number Web> photograph by KYODO

最終局をものにして13勝5敗。藤井聡太の三段リーグはわずか1期半年で終わった

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塩田武士

塩田武士Takeshi Shiota

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KYODO

29連勝という途方もない記録を残した藤井聡太が、その直前わずか半年間に5回も敗れていた。
プロへの最終関門である三段リーグの厳しさを、これ以上端的に表す事実があるだろうか。
盤を挟む相手が手強いだけではない。彼らに手こずり長居をすれば重ねた年齢と敗北が重圧と化す。
藤井が過ごした1期で相まみえ、黒星をつけた2人が、地獄のリーグで見たものとは――。

 奨励会三段に昇段するような兵(つわもの)は、小さいころから別格の強さを誇っている。

 そんな彼、彼女らが30人ほど集まって、基本的に1年で4人しか通過できない関門、それが「三段リーグ」だ。原則26歳までに狭き門を潜らなければならない過酷さから、同リーグを「地獄」と呼ぶ人もいる。

 5年前、その「地獄」を説明するにふさわしい表現が生まれた。

 藤井聡太が5敗したリーグ――。

 2016年4月23日、大阪・関西将棋会館で、第59回奨励会三段リーグの幕が上がった。大抵、月に2度の対局日があり、1日2局指される。半年を1期とし、計18局を戦い上位2人が四段昇段となって、棋士になれる。

 29人が参加した第59回の注目は無論、14歳2カ月という史上最年少棋士の誕生だったが、この初日、一人の男が密かに爪を研いでいた。第1局で三段として初勝利を飾った藤井が、午後の第2局で盤を挟んだのが、谷合廣紀だった。

 谷合は知る人ぞ知る才人だ。昨年4月に年齢制限ギリギリの26歳で棋士になった彼は現在、東京大学大学院の博士課程で、AIによる自動運転について研究している。当時は東大大学院1年生で、修士課程の研究をしながら、藤井と相対した。

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