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選手権屈指の2トップが早すぎる敗退…京都橘に憧れ、Jユース昇格を断った西野太陽と木原励のライバル関係
posted2021/01/04 17:02
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph by
Kyodo News
12月31日から行われている第99回全国高校サッカー選手権大会。早くもベスト8が出そろったが、序盤戦から好ゲームが続いていた。
1月2日、2回戦屈指の好カードとなった昌平高校vs.京都橘高校の一戦。1回戦で冷や汗をかかされた優勝候補の一角である昌平は、前半から猛攻を仕掛けて2点を先制。そのまま逃げ切って3回戦進出を決めると、翌日にはベスト8入りを果たしている。一方、“今大会最強”とも謳われた京都橘の2トップは早くも大会を去ることになった。
ライバルであり、最高のパートナー
京都橘の3年生・西野太陽(徳島ヴォルティス内定)と2年生・木原励。ともに180cmの高さを持ちながらも、しなやかな身のこなしが魅力のストライカーだ。ボールコントロールに長け、抜群のキープ力と精度の高い裏への抜け出し、そしてシュートセンスを有した彼らは、“万能型”のコンビとして注目を集めていた。1回戦の松本国際高校戦ではそれぞれ2ゴールずつを奪い、6-0の圧勝に貢献。
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しかし、Jリーグ内定者4人を擁する昌平との大一番では、なかなかボールが収まらず、わずかなチャンスをモノにできないままノーゴールに終わった。
2人にとって納得した形で終われなかったかもしれない。しかし、彼らが見せたプレーはサッカーファンを魅了し、「もっと観たい」と期待感を抱かせるプレーぶりだった。ライバルであり、最高のパートナー。今回は彼らのストーリーを記していきたい。
小屋松世代に魅了された西野
徳島県出身の西野は小学5年生の時に観た京都橘のサッカーに大きな衝撃を受けた。第91回大会、京都橘が準優勝を成し遂げた世代だ。
「高校サッカーはフィジカルとか球際が強いイメージがあったのですが、京都橘は仙頭啓矢(京都サンガF.C.)さんや小屋松知哉(サガン鳥栖)さんを中心にしっかりとパスを繋ぎながら、スピードと技術を駆使してどんどん崩していくサッカーをしていて、直感的に『ここでプレーしたい』と思ったんです。その時から京都橘に行くことしか考えていませんでした」
中学時代は徳島ヴォルティスのジュニアユースでプレー。高校進学時にはユースに昇格する話もあったが、西野の心はすでに決まっていた。
京都橘から事前にオファーをもらっていたわけではなかったため、父親に頼み込んで学校に直接、電話を入れた。自らもプリンスリーグ関西の試合に出向いたという。
当初は「遠方の選手はあまり取らない」と回答されたが、どうしても諦め切れない西野は「一度、プレーを見てください」と日本クラブユース選手権(U-15)での試合映像を京都橘に送ったのだった。そんな熱意に米澤一成監督も驚き、承諾。京都橘に寮の施設がなかったため、母と一緒に京都へ移住することとなった。