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選手権屈指の2トップが早すぎる敗退…京都橘に憧れ、Jユース昇格を断った西野太陽と木原励のライバル関係
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byKyodo News
posted2021/01/04 17:02
先輩である西野太陽との2トップで威力を発揮した京都橘FW木原励(2年)。1回戦では2ゴールをマークした
西野の強い意志はそのままプレーにも表れ、1年生の頃から出番を掴んでいった。
だが、高1の冬に米澤監督からこう言われた。
「セレッソの下部組織から良いFWが入ってくるから、来年はポジションとられるかもしれんぞ」
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西野は「どんなエグいやつが来るんやろか」と焦りと期待の感情を抱いたと振り返る。
春、初々しい1年生たちの中でひときわ「エグいやつ」に視線が釘付けになった。それが後にコンビを組むことになる木原だった。
木原は身体の線は細かったものの、抜群のステップワークを駆使したボールタッチがうまく、西野の目にはターンやドリブルなど前への推進力が高い選手に映った。「自分のプレースタイルに似ている。必ず点を取るポジションにいる印象で、狭いスペースでも3人に囲まれながらターンしてシュートしたり、どんな状況でもゴールを貪欲に狙う。まるで岡崎慎司選手のようだった」とゴール前での嗅覚と集中力に舌を巻いた。
紅白戦では、あえて木原とチームが分かれるように仕向けていたという。
「(木原に)ライバル心はめちゃくちゃありましたが、励を間近で見たことで、自分に足りないものに気づくことができた。練習での励のプレーを参考にして、時には真似もしていました」
岩崎悠人のスピードに魅了された木原
一方、木原も西野を尊敬の眼差しで見つめていた。木原が西野を初めて見たのは入学する直前の新人戦決勝。
「抜け出しが凄くうまくて、1対1もうまい。『自分に似ている選手』と思ったのですが、質が僕より高く、シュートのスイングも速くて、強烈。『この人から学べるものも大きいな』と思った」
木原も西野同様にユース昇格を断って京都橘にやってきた。中学1年生の時にインターハイ京都府予選決勝で2ゴール2アシストと大暴れしていた岩崎悠人(ジェフユナテッド市原・千葉)の突破力とスピードに震え上がった。
「速くてうまい。それでいてキャプテンとして背中でチームを引っ張る姿を見て、一瞬で憧れの存在になりました。僕も岩崎選手のようになるために京都橘に行くと決めました」
しかし入学してみると、2年生ながら10番を背負いエースを任されている西野がいた。1年生の頃は西野の活躍をピッチの外から見ることが多かったが、「(西野)太陽君は相手の股下にシュートを打つのがうまくて、振りの速さや大臀筋の強さを、シュート練習の時からずっと観察していました」と学び続けた。