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藤井聡太二冠と研究者が組む? 最強ソフト生みの親が語る「AI超え」がもはや“時代遅れ”である理由
posted2020/12/27 17:02
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph by
JIJI PRESS
今年5月に行われた世界コンピュータ将棋オンライン大会で、見事優勝を果たした将棋ソフト「水匠2」の開発者にして、現役の弁護士として自身の法律事務所も持つ杉村達也さん。2015年の電王戦を題材に、元奨励会員の青年が最強将棋ソフト「AWAKE」の開発を目指す異色の将棋映画『AWAKE』(12月25日(金)より全国公開中)の監督・脚本を務めた山田篤宏さん。
将棋ソフトと棋士の関係性はどうなっていくのか――。弁護士、映画監督として全く違う分野で活躍しながら、同じく将棋に魅了された2人が「近未来の将棋界」を想像します。(全2回の1回目/#2へ続く)
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もはや「将棋ソフト使っていない人の方が稀」
山田 いきなりなんですが、藤井聡太二冠と対談されたんですか?!
杉村 そうなんですよ。世界コンピュータ将棋オンライン大会で優勝したのをきっかけに、お話する機会に恵まれました。ちょっと話題になった藤井二冠の「50万円の自作PC」についても少しお話しさせていただいて。
山田 それはすごい! やっぱりあのPCは杉村さんから見ても正解なんですね。
杉村 私も今年、同等のスペックのPCを使って「世界コンピュータ将棋オンライン大会」で優勝してますので(笑)。コンピュータ将棋的には最善とされているもので、藤井二冠が選んでいるのを知って、本気度を感じましたね。
山田 へえー。でもどこかで、今はプロも将棋ソフトを使った研究を積極的になさっていると聞きました。
杉村 使ってない人の方が稀、というレベルな気がします。PCが扱えるなら使うべしというくらい浸透しているようですよ。
「棋士が研究者と組んで戦う」時代がくる?
山田 そうなんですか。対局を見ていても、「これ、すごく研究されたんだろうな」って思うことも多かったんですけど、そこまでとは……。
でもそうなってくると、藤井二冠とかは最も稼いでる棋士の1人だと思うので、CPUをはじめとした研究への投資も潤沢にできるんでしょうね。それこそ、棋士の先生方が研究者と組んでチームみたいに戦うことも出てくるのかな。F1じゃないけど。
杉村 実はその通りなんです。なのでまさにモータースポーツのように、マシン開発がコンピュータ将棋ソフトで、ドライバーが棋士、というイメージでしょうか。
山田 でもそれだとタイトル戦とかは、同じ人が対局相手同士をバックアップできないですね(笑)。観る将としては、すごくワクワクします。
――AI将棋と言えば、今年発表された新語・流行語大賞に「AI超え」がノミネートされました。これは杉村さんのツイートが発端になったと報じられていますが……。