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世界一強い将棋ソフトのコストは? 開発者は「国家プロジェクトにしてほしいな、と(笑)」

posted2020/12/27 17:03

 
世界一強い将棋ソフトのコストは? 開発者は「国家プロジェクトにしてほしいな、と(笑)」<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

将棋ソフト「水匠」開発者で弁護士の杉村達也さん(左)と、吉沢亮主演映画「AWAKE」監督の山田篤宏さん(右)

text by

茂野聡士

茂野聡士Satoshi Shigeno

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Hideki Sugiyama

 今年5月に行われた世界コンピュータ将棋オンライン大会で、見事優勝を果たした将棋ソフト「水匠2」の開発者にして、現役の弁護士として自身の法律事務所も持つ杉村達也さん。2015年の電王戦を題材に、元奨励会員の青年が最強将棋ソフト「AWAKE」の開発を目指す異色の将棋映画『AWAKE』(12月25日(金)より全国公開中)の監督・脚本を務めた山田篤宏さん。

 将棋に魅了された2人が「近未来の将棋界」を想像する特別対談の2回目は、“将棋ソフトはどうやって作られているのか”について話が進んでいきます。(全2回の2回目/#1より続く)

◆◆◆

「国家プロジェクトにしてほしいな、というレベルです」

山田 すごく素朴な疑問を聞いちゃうんですが……。将棋ソフトを開発していて、電気代って結構かかります? 

杉村 結構かかるんですよ(笑)。一人暮らしなんですが、3人分ぐらいの電気代になってますね。ただ、“そのくらいで済んでいる”とも言えます。

山田 やっぱりそうなんだ。実は今回の映画『AWAKE』で、主人公の英一(吉沢亮)が電気代を払えなくて、食べたいものも食べないでプログラミングをしているっていうエピソードを1回考えたんです。結局、なしになったんですが。

杉村 凄い設定ですね。でも正解です。強いソフトには計算力がとても重要で、その計算力を突き詰めていくと、計算資源となるクラウドコンピューターを借りるお金がほぼ占めます。

山田 ランニングコストがすごいんだ。

杉村 一番性能の良いコンピュータを継続的にクラウドで借りようとすると、1時間3000円、1日で7万2000円になっちゃうんですよね。いくらお金があっても足りないので、国家プロジェクトにしてほしいな、というレベルです(笑)。

山田 「水匠」だと具体的にどれくらいのコストなんでしょう?

杉村 今「水匠」で使っているCPUが50万円で、それを年がら年中、壊れるまで使っています。それに電気代が加わって、100~200万円というところですかね。

山田 だいぶかかりますね(笑)。そもそも将棋ソフトのプログラムを組むのにも相当手間暇かかるだろうに……。

1個間違えれば動かない…将棋ソフトができるまで

杉村 イチから動く将棋ソフトを作るには、だいたい1週間ぐらいかな。将棋の平手の局面から,指せる手をランダムに選び,人間もしくはコンピュータ相手に終局まで指せるようになるまでに1周間くらいかかるということです。

 そのレベルに至るまででも,将棋のルール自体が複雑なので,ある程度の工夫をしつつプログラムを書いていかないと,いつまで経ってもプログラムが書き終わらないことになってしまいますね(笑)

【次ページ】 将棋ソフトは開発者にとって「子供のように愛情を込めた存在」

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