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由規が神宮と地元宮城で浴びた大声援「ケガをしなかったら13年間も野球を続けようと思わなかった」
posted2020/12/23 11:03
text by
田中大貴Daiki Tanaka
photograph by
SANKEI SHINBUN
◆聞き手/田中大貴
――個人的な話になりますが、1771日ぶりの一軍登板となった試合(2016年7月9日対中日戦)で、実況を務めさせてもらいました。あの神宮球場の雰囲気は特別なものでしたし、改めて由規選手の魂みたいなものを感じました。肩、肘のケガと向き合い続けてきたことで得たものはありますか?
ありがとうございます。ケガをした当初は、あのときにこうしていればよかったとか、もしケガしていなかったら……なんて思ってしまったこともありました。でも、これだけ何度もケガやリハビリを繰り返していると、何か自分で変えなきゃいけないという思いがだんだん強くなっていくんです。トレーニングを変えてみたり、先発での登板までの過ごし方を変えてみたり。今年は中継ぎとしてしか投げてないんですが、そこでもどうやってリカバリーしていくか、とか。
――なるほど、思考力ですね。
ケガをしたことによって「考える力」は身についたと思います。あとは、復帰したときの声援があんなに嬉しいとは思わなかったですね。苦しい時間は長かったのですが、それ以上のものを味わわせてもらっているなという思いがありました。
1771日ぶりの神宮復帰戦と1試合の地元凱旋
――思い出深い試合は?
やはり手術明けで登板した二軍の試合(14年6月14日)でも「野球は楽しいな」と思いましたし、先ほど話に出たヤクルトでの一軍復帰戦も5年ぐらいかかったので、すごい印象に残っています。楽天加入後も投げられない状態が続きましたが、昨年の最後に一軍のマウンドで投げることができた。自分の地元であの歓声をいただけたことは今のモチベーションにも繋がっています。
――その歓声を知るからこそ、何度も這い上がれる?
それは間違いなくあります。自分は本当に恵まれてると思います。
――ケガの経験などは、後輩からもアドバイスを求められることも多いのではないでしょうか?
ケガをした後輩にはよく聞かれます。ただ、中には「ケガは時間が経てば治るだろう」と思っている選手もいる。だからそこは違うよって厳しく伝えたこともありました。逆に、手術して苦しんでいる選手には「大丈夫。俺、5年もかかったよ」って。こう言ってあげられるのは僕しかいないので(笑)