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札幌圏内でヒグマが人間を殺して腹部、臀部などを食べて…持っていれば生存確率が上がるものとは
posted2020/12/13 11:01
text by
伊藤秀倫Hidenori Ito
photograph by
Getty Images
2001年5月6日午前、札幌市の会社員Bさん(53・当時)は、定山渓の豊羽鉱山付近に「アイヌネギ(ギョウジャニンニク)を採りにいく」と行って出かけたまま、行方不明となった(Bさんの車は、その日の夕方、Bさんの家族によって発見された)。翌日、地元の警察や消防、猟師などからなる捜索隊がBさんの車があった付近を中心に捜索したところ、山中でヒグマ1頭を発見し、射殺。その近くでBさんの遺体を発見した。
遺体はうつぶせの状態で、腰から下が土で覆われ、頭部と上体部は裸出し、両手は胸の前に交差するように組まれていた。腹部、臀部、上下肢などを中心に食害された痕があった。
“札幌の奥座敷”で起きた特異な事件
「このケースは典型的な食害目的、つまりヒグマが人間を食べるために襲ったケースです。これを最後に札幌圏内で人身事故は起きていません」
そう語るのは、ヒグマ研究の第一人者・門崎允昭氏(82)だ。
いったいBさんの身に何が起こったのか。事故直後に実際に現場を調査した門崎氏とともに、“札幌の奥座敷”で起きた特異な事件を再検証する。
現場の状況から推測される当日の経緯は以下の通りだ。
Bさんはまだところどころ雪の残る中、豊羽鉱山の約2キロ東よりの地点にある沢に入り、幅2~4メートルの沢を遡行。沢の入り口から200メートル、沢が二股に分かれる場所でヒグマに遭遇し、いきなり襲われたと見られる。捜索隊は、この場所でBさんの長靴の片方が落ちているのを発見した。
「クマは立ち上がった状態で被害者を真正面から爪で引っ掻いたようです。被害者は反射的に頭部を振って避けようとして、頚部に爪が当たり受傷しています。倒れた被害者はさらなる攻撃から逃れるべく地面を這って逃げようとしたものの、現場の状況から判断すると、恐らく最初の襲撃から数秒で絶命したものと見られます」