炎の一筆入魂BACK NUMBER
《契約更改ウラ話》「彼がいれば誠也らも生きる」と言われても…広島・西川龍馬「すべての数字が物足りない」
posted2020/12/09 17:01
text by
前原淳Jun Maehara
photograph by
Sankei Shimbun
勝負の世界には、常に競争と世代交代がつきまとう。主力の離脱は新たな戦力が台頭するチャンスでもある。ただ、新戦力のアピールが不発に終われば、より一層主力の存在感が高まる。
広島の西川龍馬は主力と期待された今季、不在によって、その存在感を再認識させた。11月11日に「右腓骨筋腱腱鞘形成術」の手術を行ったが、その原因となったケガによる影響がありながら、主砲の鈴木誠也とともに広島打線をけん引した。契約更改では鈴木清明球団本部長から「彼がいれば打線のつながりが良くなるし、誠也らも生きる」と高く評価されたという。
「ほんまに今年はいいイメージがまったくない」
120試合制の今季、出場はわずか76試合だった。離脱の間には大盛穂や宇草孔基といった若い外野手の台頭もあった。それぞれにスピードや積極性、思い切りの良さをアピールして大きな期待を抱かせたが、西川の安定感や存在感の大きさを埋めることはできなかった。
ADVERTISEMENT
西川不在時の40試合、チームは16勝21敗3分け。シーズン戦績よりも1つ多い借金をつくった。広島打線にとって西川が加わることは、+1以上の効果があるといえるだろう。
存在感を示しても「すべての数字が物足りない」と自己評価は厳しい。
「今年は野球をやった感がないなと、終わってみて思いました。ほんまに今年はいいイメージがまったくない。ケガとの戦い、そんな1年でした」
ケガによって苦しめられた。今季は相手投手だけでなく、違和感とも戦っていた。
打撃の根幹ともいえる下半身の負傷で
球団からも、本人からも、明らかにされていない右足首負傷の理由は恐らく開幕を1週間前に控えた6月13日。ソフトバンクとの練習試合だった。8回、代打栗原の中堅後方の打球を背走してジャンプし、着地した際にひねったとみられる。プレー後、明らかに表情をゆがめ、翌14日の試合前練習の動きもおかしかった。
打撃練習ではインパクトの時に右足で支え切れず、フォロースイングのときには右足を上げて軸足1本になるしぐさが何度も見られた。その後のノックも広瀬純外野守備走塁コーチが中堅近くで動きを確認していた。試合は2回に代走が送られ、ベンチに退いた。
打撃の根幹ともいえる下半身。しかも西川のように動から動で始動し、踏み込んだ右足に力をぶつける打ち方はより下半身の力を要す。一度投手側の右足に重心を移動させてから軸足に100%の溜めをつり、スイングととともに再び右足にぶつけていくことでインパクト時の強さを出している。土台がぐらつけば建物はぐらつくように、打撃においても土台は重要だ。しっかりとした土台があって、安定したスイングや投球につながる。