オリンピックPRESSBACK NUMBER
小平奈緒、5年ぶりの敗戦の意味「自分が目指してきたのは金メダルではない」
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byJIJI PRESS
posted2020/12/05 11:00
先月13日、女子500mで2位になった小平奈緒。その眼に映ったものは何だったのか
自分が目指してきたのは金メダルではない
小平には平昌五輪で頂点に立ったからこそ気づけたことがあるという。
「自分が目指してきたのは金メダルではない」ということだ。
「北京五輪も近づいては来ますが、五輪はその時を駆け抜けるものだと思っています。人生の最高の作品を表現して、皆さんに見ていただきたいのが五輪。その瞬間を駆け抜けたいという思いは今も変わりません。五輪に人生を懸けるというよりも、人生の中の1ページのその一瞬を充実したものにしたいという思いです」
平昌五輪の後にさまざまな分野の人々と出会ったり関わったりする中で、アスリートとしての表現の中身をより深くしていきたいという気持ちが生まれたとも言う。
「今は、スポーツとは、というところへ思考が巡っています。五輪で勝つとか、金メダルを獲るとか、何秒出すとかというところの先にあるスポーツの価値を、五輪という舞台を使って表現できれば最高なのではないかと感じています」
「何度でも立ち上がればいい」
舞台は再び帯広。小平は5年ぶりに国内で敗れた女子500mの翌日に行なわれた女子1000mを制し、敗れたときとさほど変わらない穏やかな笑みを浮かべていた。そして、帯広大会から1週間後に行なわれた全日本選抜八戸大会(青森・YSアリーナ八戸)では、帯広で出た課題を修正し、女子500mを37秒96で制した。
「少し失敗してしまったら、懲りずに何度でも立ち上がればいいと思っています。求められるのはもっと高いもの。少しのきっかけで飛躍する可能性はまだまだあると思うので、1ミリでも動き続けたいです」
冬を迎え、新型コロナウイルス感染症問題は世界中でとどまる気配を見せず、スピードスケートでもワールドカップ前半戦の中止や、後半戦のスケジュール変更、さらに日本スケート連盟が選手の海外派遣を中止するなど、トンネルの終わりは見えない。
しかし、これほど厳しい時期にも、アスリートの心に寄り添っていたいと思うのはなぜだろうか。
勝てば謙虚、負ければグッドルーザーが広義の勝者たることを教えてくれる。小平奈緒からいろいろな気づきをシェアしてもらえる冬が、今年もやってきた。