第97回箱根駅伝出場校紹介BACK NUMBER
国士舘大学は6区で勝負を懸ける。日本体育大学は改革元年に虎視眈々と。
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箱根駅伝2021取材チームhakone ekiden 2021
photograph byNanae Suzuki/Asami Enomoto
posted2020/12/11 11:00
前回6区を走った国士大・曽根が勢いをもたらせるか(写真左)。日体大のエース池田は2区を志願している。
日本体育大学
第97回箱根駅伝予選会:6位
第96回箱根駅伝(前回大会):総合17位
73年連続、73回目
就任初年度は「群れながら」スキのない走りを。
文=杉園昌之
通算10回の総合優勝を誇る日本体育大学も、近年は苦戦が続く。前回大会は繰り上げスタートの屈辱を味わい、2年連続でシード権争いにも全く絡めなかった。
不振に歯止めをかけるべく、7月に招へいされたのがOBの玉城良二監督だ。豊富な指導経験を持つ59歳は長野東高を率い、高校女子駅伝で2度の準優勝に導いた実績を誇る。「大学では新米監督ですよ」と謙遜しながらも、わずか3か月でチームをまとめ上げ、箱根駅伝予選会を6位で通過。73年連続で本大会の出場権をつかむと、すぐに表情を引き締めた。狙うのは3年ぶりのシード権獲得である。
「目標を達成するためには穴のない駅伝をするしかないです。特殊区間(山)でタイムを稼ぐ選手もいなければ、流れを大きく変えるような留学生エースもいません。一人でもミスをすれば難しくなります。スキをつくらないことです」
凡事徹底。競技面だけではなく、生活面からスキをなくすように心がけている。キャプテンの嶋野太海(4年)を中心に食事、睡眠、掃除など細かな点に気を配らせ、より規則正しい毎日を送るように指導。決して強制しているわけではない。選手たちの自主性を重んじ、それぞれが自らを律するように促している。そのすべてが競技にもつながってくるからだ。
「箱根でカギを握る単独走がそうです。環境、状況に応じて、どのようなレース運びをするのかは、自分自身で判断しないといけません。前半に突っ込むのか、ペースを抑えるのか。普段の生活から自分の決めたことをきっちりできないと、駅伝でもその判断は下せないと思います」
「箱根が甘くないことは分かっている」
箱根駅伝では初めて運営管理車に乗るが、指示できることは限られているという。11月の全日本大学駅伝でもあらためて実感した。
「選手たちはレース中に監督から何を言われても、先頭を走っていれば気分がいいし、後ろを走り続けていれば苦しいもの。よっぽど勝負をあきらめかけたりすれば言いますが、基本的にマイクを通して大きな声を張り上げるつもりはないですね」
自身も現役時代に第60回大会の箱根駅伝に出場。4年時に10区で区間3位と好走し、準優勝に貢献した。それから実に37大会ぶりの箱根駅伝となる。指導者となったいまは自らの高ぶりよりも、日々の練習で選手たちの充実した表情を見ることに幸せを覚えている。
「箱根駅伝までの日々を大切にしています。しっかりとした準備を整え、本番を迎えたい。大会当日は楽しむ余裕などないでしょうからね。箱根がそれほど甘くないことは分かっています」
区間配置は昨季から指導している小野木俊コーチほかスタッフ、選手の希望を聞きながら、合議の上で戦略を立てていくという。