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試合用セットで120万円! カーリングの“ストーン”はなぜそんなに高いのか?【韓国協会がデータ収集に熱心な理由】
posted2021/03/21 11:02
text by
熊崎敬Takashi Kumazaki
photograph by
JMPA
「もぐもぐタイム」や「そだねー」がバズり、すっかりウインタースポーツの定番となったカーリング。「氷上のチェス」と呼ばれる戦略のゲームでは、ご存知の通りストーンが活躍する。1チームは4人で編成され、ひとり2投。つまり対戦相手を合わせると、重さ約20kgのストーンが1試合で16個投じられる。
ストーンはばら売りではなく、16個単位でのセット売り。2年前、日本カーリング協会は4セット(計64個)購入し、1セットあたり約120万円を支払った。つまり1個7万5000円也。高い! と驚いた人もいるだろう。だがカーリングのストーンは、ただの石ではない。花崗岩、それも英国スコットランド地方の無人島、アルサクレイグ島で切り出された花崗岩と相場が決まっているのだ。
カーリング発祥の地スコットランドの沖に浮かぶこの島は、良質な花崗岩の産地であり、19世紀半ばから採石が行なわれている。
ストーンは2種類の花崗岩で構成され、衝突面を含む大部分には弾力性に優れ、欠けにくいコモングリーン花崗岩が、氷と接する面には密度が高く、水分を吸収しない島特産のブルーホーン花崗岩が使われる。ここに産地の異なる花崗岩を使うと、吸収した水分が膨張して割れやすくなるという。やはりカーリングのストーンは、アルサクレイグ産でなければならないのだ。
ストーンのデータ収集に力を入れている韓国
日本カーリング協会の井出瑞子さんによると、大会ではストーンをめぐる高度な情報戦が繰り広げられるという。
「ストーンには特徴や癖があり、それぞれにシリアルナンバーがついています。国際大会で繰り返し使用されるセットもあるため、大会のたびに協会がストーンの情報を蓄積していけば大きな財産になる。そうしたデータ収集に非常に力を入れているのが韓国協会。大会中は試合が終わった夜、ストーンの把握も目的とした練習が行なわれますが、ある大会で韓国の選手が出てこないときがありました。ストーンの情報を完全に把握する彼らは、練習に出る必要はないと判断して、その時間を休息に充てていたのです」
カーリングでは氷の状態がとりわけ重視されるが、ストーンも勝敗を分ける重要な役割を担っているのだ。
ストーンの寿命は非常に長く、100年を超えるものもあるという。スコットランドの無人島から切り出された花崗岩は、プレイヤーの世代を超えて今日も氷上を滑り続ける。