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「なぜ2年で…?」プロ野球の“不可解な”戦力外通告 「とりあえず“ハイッ!”」ができずクビに?
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byGetty Images
posted2020/11/25 17:04
「なぜ2年で?」将来有望な選手がクビになった理由は? ※写真はイメージ
「素直じゃない」
とても研究熱心で、野球についての探究心の強いその選手は、若さに似合わず、自分なりの野球理論を堅持。他の選手たちのように、指導者たちのアドバイスを「はい、わかりました!」と受け入れなかったり、時として、自らの思うところを主張したりするのを、「素直じゃない」と受け取られ、不利な立場に追い込まれた。
私もヨソから聞いた話なんですが……という“但し書き”のついた「情報」ではあったが、人の社会ではありそうな話ではあるなぁ…と思ったものだ。
野球の世界という領域は、他のスポーツと比べても、いまだにはっきりとした「タテ社会」が残る世界である。
指導者からのアドバイスに対しては、その内容が理解、納得できるかどうかは別として、とりあえず「ハイッ!」と受け入れておく…それが、現場では“当たり前”の風景として、多くの選手や指導者は、子供の頃から、普通のこととして慣らされてきている。
そんな雰囲気の中で、仮に、入団1年目、2年目の若い選手が、「ボクはこう考えるんですが……」などと言い出したら、確かに「異端児」的な印象を持たれることは、想像に難くない。
野球選手の19歳は“10年選手”
以前、日本文理大学(大分市)・中村壽博監督から、こんな話を聞いたことがある。
すでに全国大会の優勝経験もあり、毎年6月の「全日本大学野球選手権大会」では常連に近い存在になっているチームを率いて、もう20年を超える。
「大学1年生って、だいたい19歳じゃないですか」
選手の育て方、選手たちとの付き合い方の難しさという“テーマ”に、話が及んでいた時だ。
「監督になって最初の頃は、1年生なんて、まだまだ未熟な子供ぐらいにしか思ってなかったんですけど、よくよく考えてみると、野球の選手の19歳って、たいていの選手が小学校の低学年から野球始めてますから、実はもう立派な“10年選手”なんですよね」