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巨人の「どうしようもない力負け」を演出した鷹エース・千賀滉大 坂本、岡本に植え付けた“残像”とは
posted2020/11/26 11:45
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
Nanae Suzuki
屈辱の4連敗……いや8連敗だった。
「私も含めてコーチ、選手がまだ1回りも2回りも大きくならないといけない」
グラウンド上でソフトバンクの勝利のセレモニーが繰り広げられる中で、巨人・原辰徳監督の敗者のインタビューは淡々と進行した。
昨年に続いてのスイープでの完敗。
セ・リーグを独走で連覇して臨んだシリーズは、昨年の屈辱を晴らすためのものだったはずだ。ところが現実として突きつけられたのは、力の差を縮めるどころか、むしろ昨年よりさらに高くなったソフトバンクの壁だった。
いずれもどうしようもない力負けだった
4試合を振り返ると「あそこで誰かが1本打てていれば」とか「あのミスがなければ」という具体的な場面はあまりない。
いずれもどうしようもない力負けだった。ただ、すべてを振り返ったときに、1つだけ浮かび上がってくる事実がある。
それは今年もまた巨人は千賀滉大投手にやられたのではないか、ということだった。
ソフトバンクの千賀と巨人の菅野智之投手という2人のエースが真正面からぶつかった第1戦。今年ほど日本一の行方を占う上で、初戦の勝敗に比重のかかったシリーズはなかったかもしれない。
戦力面では圧倒的に優位と言われていたソフトバンク。その強大な敵を倒すためには、巨人はエース・菅野が先発するこの初戦に勝つことが絶対条件と言われていた。
ところがその菅野が2回に栗原陵矢外野手に2ランを浴びて先制を許すと、6回にも2点タイムリー二塁打を打たれて追加点を奪われた。栗原1人にやられた形で4失点して試合の主導権を握られてしまっての完敗。
そして予想通り初戦を落とした悪い流れのままに、4試合をスイープされて敗れ去った。