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“大魔王”伊藤美誠がコロナ禍中に「3つの進化」 中国のライバルに情報をさらして目指す野望とは 

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織部隆宏

織部隆宏Takahiro Oribe

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posted2020/11/25 11:01

“大魔王”伊藤美誠がコロナ禍中に「3つの進化」 中国のライバルに情報をさらして目指す野望とは<Number Web> photograph by Getty Images

11月に中国で行われたワールドカップで銅メダルを獲得した伊藤美誠

「1試合の中で1球たりとも同じサーブが飛んでこない」

 左官職人がコテを握るようなグリップに、ラケットハンドを体の前で大きく回す独特なフォーム。この新サーブが観客の目を引く。対戦相手は何度もレシーブを浮かせてしまい、伊藤が主導権を握る場面が多かった。

 同じ回転のサーブでも打球前の構えやバックスイング、そして打球後のフォロースルーが変われば相手は違うサーブに感じてしまう。対戦相手にとっては、「1試合の中で1球たりとも同じサーブが飛んでこない」錯覚に襲われるため、プレッシャーがかかるだろう。

 これは1980年代~90年代にかけて最強中国を破って何度も世界一になったスウェーデンのレジェンド、ワルドナー選手を彷彿とさせる。

 2つ目に、レシーブ時の動きのスピードが格段に素早くなった。

 筋力の向上もあるかもしれないが、それ以上に地面に対する足の置き方が良くなった。3月のカタールオープン時には肩幅よりも広かった足幅(スタンス)は肩幅と同じか少し狭くなった。

 また、つま先の向きも内股気味からガニ股に変更。つま先が外を向きスタンスが狭くなることで中心から外側に素早く動けるようになっている。小柄な伊藤にとって、最適なスタンスを探し続けた結果、ちょうど良い立ち位置を見つけたように見える。

敢えて相手の土俵に乗って試合を組み立てた

 最後にバックハンドのベースとなる技術レベルがワンランク向上したように見える。

 今大会の伊藤は、準決勝の中国・孫穎莎との一戦で、得意の「変化をつけたチャンスメイク」を制限し、敢えて相手の土俵である真っ向勝負でのラリーを軸に試合を組み立てた。敗れはしたもののゲームカウント0-3の劣勢から2ゲームを連取し、接戦に持ち込んだところからも基礎技術の充実を感じさせる。

 特にバックハンド強打の進化は著しく、前述の中国が伊藤対策で狙ってくる速いロングサーブに対し、バックハンド強打(スマッシュ、プッシュ)で狙い打つ姿勢からもその進化のほどが確認できた。

 伊藤はまだ試している段階なのかもしれないが、バックスマッシュでのレシーブを見せ球として使うのではなく、これをスタンダードにしようとしている選手は卓球史で初かもしれない。末恐ろしいプレーヤーだ。

【次ページ】 意外な行動に見る大魔王の野望とは

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