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“大魔王”伊藤美誠がコロナ禍中に「3つの進化」 中国のライバルに情報をさらして目指す野望とは
text by
織部隆宏Takahiro Oribe
photograph byGetty Images
posted2020/11/25 11:01
11月に中国で行われたワールドカップで銅メダルを獲得した伊藤美誠
意外な行動に見る大魔王の野望とは
最後に、試合以外の場面での伊藤美誠のある行動を見て心から驚いた。
それはライバルである中国代表の陳夢・孫穎莎との練習を試合会場で行っていたことだ。
球質の変化、すなわち「個性」や「やりにくさ」が勝負の要となる伊藤のような異質型の選手は、通常ならばライバルとの練習は絶対に避ける。相手に慣れられないようにするためだ。そのリスクを冒してまで練習時間を共にしたことからは、別の意図を想像せざるを得ない。
伊藤はこれまで、型破りのプレースタイルで、相手に自分のプレーをさせないタイプだった。一方でそのトリッキーなプレーが通用しない相手、自分のペースに持ち込めない試合においては分が悪い傾向にあった。
しかし、伊藤は今回、ライバルに「伊藤のタイミング、球質」という自身の特徴・武器の一部を自らさらした。これは、短期的には勝ちにくくなるリスクを負ってでも「相手の土俵でも対等に戦える力をつける」という常勝の道を選んだと解釈できるのだ。
つまり「一度の戴冠ではなく、絶対的王者としての君臨」。
伊藤はそんな野望を胸に秘めているのではなかろうか。
大魔王が世界を征服する。そんな未来を8カ月ぶりの国際大会を見て想起させられた。