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岩隈久志1年目のキャッチボール「危ないと、直感が走った」 投球禁止から始まった日米170勝の下準備 

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倉世古洋平(スポーツニッポン新聞社)

倉世古洋平(スポーツニッポン新聞社)Yohei Kuraseko

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photograph byKyodo News

posted2020/11/18 11:01

岩隈久志1年目のキャッチボール「危ないと、直感が走った」 投球禁止から始まった日米170勝の下準備<Number Web> photograph by Kyodo News

マウンドにいる岩隈のもとへ駆け寄り言葉をかける久保コーチ(当時)

なぜ岩隈は大投手になれたのか

 改めて聞く。久保さん、岩隈投手が入団当時から備えていた素質って、何ですか。

「体のバネがあってランニング姿が美しくて、ゴロ捕球の動きも良かったね」

 近鉄の大エース、317勝の鈴木啓示さんは、高卒新人ながらプロの練習が物足りず、全体メニュー後に自主練をたっぷりしていたそうだ。そこまでではないにせよ、少し期待していた。「実はこんなにすごかったんだよ――」という名選手ならではのエピソードを。私の期待が幻想にすぎなかったことが、久保さんの“当たり障りのない”述懐で分かった。パ・リーグ最多勝2度、最優秀防御率1度、米大でノーヒットノーランも達成した日米通算170勝の出発点は、球威、変化球、身体能力で、特筆するような点はなかったのだ。プロならばゴロゴロいるような素材だったのだ。

 では、なぜ大投手になったのか。

 久保さんは、近鉄、阪神、ソフトバンクなどで23年もコーチを務めた“育て上手”。数多くの日本投手に水をやって花を咲かせただけでなく、元近鉄のジェレミー・パウエルさん、元阪神のランディ・メッセンジャーさんら、助っ人の飛躍も支えた。現役と合わせて合計44年間もプロ野球界に身を置く生き字引が考える「成功の秘訣」には、重みがあった。

「素直で明るいことが、クマの一番の成功の秘訣だと思う。ニコニコして、ほがらかで、気持ちが明るい子ですよ。ドラフトで入っている子はみんな素質がある。明暗を分けるのは、習いたい気持ちがあるかないか。指導者に疑いを持つと、何かに取り組もうとする時に二の足を踏んでしまうもの。差が出るのは、そういうところでしょう。

 クマは取り組む姿勢が素晴らしかった。こちらの言うことを理解した上で、体を意識して動かしていた。メッセンジャーも、日本で成功するしかないから、必死だった。後で人伝に聞いた話ですが、クマはプロに入ったときに、全ての技術を一から教えてもらうという覚悟を持っていたようです。何でも吸収しようとするスタンスだったのでしょう」

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