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神戸・三浦淳寛監督と「トランジション」 頻出ワードの哲学、バルサ的ポゼッションの理想は
text by
白井邦彦Kunihiko Shirai
photograph byJ.LEAGUE
posted2020/11/01 11:01
シーズン途中からの采配となっている三浦淳寛監督。ヴィッセルはACLでの戦いも待ち受ける
ちなみにネルシーニョ体制時代は……
ちなみに、ネルシーニョ元監督の頃は、今の柏レイソルのように前線からプレスをかけてショートカウンターを狙うチームだった。ネルシーニョ監督がよく口にしていた言葉は「球際の強さ」「ハイインテンシティ(高い強度)」である。
また、ポゼッションサッカーの先駆者と形容されるフアン・マヌエル・リージョ元監督は、「コントロール」という言葉をよく使った。彼が理想としたのは、相手陣内に全員が押し込み、常にボールを保持した状態での90分間ゲームを支配するサッカーだった。
三浦監督は「トランジション」
では、現指揮官である三浦淳寛監督の場合はどうだろうか。就任3日目に初陣というドタバタ劇の中で、選手たちに伝えた課題は「トランジション」だった。日本語で言うと「攻守の切り替え」である。
就任後2試合目の第29節・名古屋グランパス戦の後にはこんなコメントを残している。
「やはりゲームを支配したいという思いは当然あります。が、ボールを奪われた後のトランジションや、それでも奪い返せなかった時の守備の意識は、今、徹底してトレーニングしています」
実際、この試合ではボールロスト後の選手のリアクションは速かった。それを象徴するシーンが前半10分過ぎにあった。
左サイドでアンドレス・イニエスタがボールを奪われた後、ルーズボールをすかさず古橋亨梧が追いかけ、セルジ・サンペールが高い位置でボールを回収している。ロストから回収までは約3秒。まるでボールロストをしていなかったように再びボール回しをはじめ、最後はイニエスタがチャンスメイクしている。
奪われてもすぐに奪い返し、常に相手陣内に押し込んだ状態を作る。これはリージョ元監督が掲げていたコンセプトにも共通する部分であり、スポーツダイレクター時代の三浦淳寛氏が求めたものでもある。