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大久保嘉人にドヤされてもめげない18歳 藤田譲瑠チマはヴェルディ産の要注目銘柄
posted2020/11/01 06:00
text by
海江田哲朗Tetsuro Kaieda
photograph by
J.LEAGUE
2013年、東京ヴェルディジュニアユースの新中1セレクション。ゲーム形式のセッションが始まる前、「おまえ、どこのポジションやってるの? 前? 後ろ?」と甲高い声を響かせている選手がいた。そして、即席のチームメイトに自分の得意とするプレーを伝え、各自の立ち位置と仕事の分担を素早く取りまとめたという。
「それを見た瞬間、この選手は獲ろうと決めましたね」と語るのは、当時東京Vユースの監督を務めていた冨樫剛一である(現U-19日本代表コーチ)。やがてトップに昇格し、重要な戦力となる藤田譲瑠(ジョエル)チマ。ナイジェリア人の父と日本人の母を持つハーフだ。
「ヴェルディの育成は技術偏重と捉えられがちですが、本当に欲しいのは考えてサッカーをやれる人間。ジョエルのコーチングの能力、集団をまとめるリーダーシップはピカイチで、思考力の高さを裏付けるものでした」
U-18日本代表をわずか3日で牛耳って
その後、冨樫はトップの監督、強化部ダイレクターを歴任し、2019年春からJFAのナショナルコーチングスタッフに。東京Vでは藤田を直接指導する機会に恵まれなかった。
「ユースに上がり、高2あたりは試合のメンバーに入れずビデオ係をやる時期もありましたね。伸び悩みと見られたかもしれませんが、プレーは着実にレベルアップしていましたから特に心配はしてなかったです」(冨樫)
指導者と選手の間柄になるのは、ナショナルチームにおいて。昨年、U-18日本代表のキャンプに藤田を招集した際は、わずか3日ほどで中心の位置を占め、同代表の影山雅永監督は「もうチームを牛耳っちゃったのか」と笑っていたそうだ。
中盤の底に位置し、攻守をつなぐリンクマンとしての優れた働き。ボール奪取力の高さ、セカンドボールに対する鋭い反応、何より周りを声で動かしてオーガナイズする能力の高さ。初見から今日に至るまで、冨樫の眼に映るプレーヤーとしての原型は変わっていない。