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神戸・三浦淳寛監督と「トランジション」 頻出ワードの哲学、バルサ的ポゼッションの理想は
text by
白井邦彦Kunihiko Shirai
photograph byJ.LEAGUE
posted2020/11/01 11:01
シーズン途中からの采配となっている三浦淳寛監督。ヴィッセルはACLでの戦いも待ち受ける
“5秒ルール”にも通じる部分
さらに言えば、かつてバルセロナを率いていたジョゼップ・グアルディオラ監督の“5秒ルール”にも通じる部分だ。敵陣でボールを奪われたら、5秒以内に奪い返すという意識づけを表現したものである。
2018年から本格的にポゼッションサッカーへと移行したヴィッセル神戸は、周知の通りバルセロナを手本にしている。当然、この5秒ルールはコンセプトの1つとして存在するに違いない。ここに甘さを感じていた三浦監督が就任当初に「トランジションのところは何度も選手に言いました」と述べたのは、自然な流れだったと言える。
アジアNo.1クラブへの動向
では、2018年からメディアがこぞって“バルサ化”と騒いできたヴィッセル神戸のポゼッションサッカーは、どこまで理想に近づいているのだろうか。
この間、指揮官は吉田孝行、リージョ、再び吉田、そしてトルステン・フィンクを経て、三浦淳寛監督へと目まぐるしく変わっている。その都度、フォーメーションやシステムなどに指揮官の色付けが加わっていった。
当然、選手たちにはやや戸惑う部分があった。ただ、それでも大きな方向性は継続してきたと言っていいだろう。2018年以前は監督が変わればサッカーもガラッと変わっていたが、少なくともここ3年はそれほど脱線していない。おそらく“バルセロナのようなチーム”という、誰もが想像しやすいビジョンがはっきりしているからだ。
そして目標も、アジアNo.1クラブで固定されている。かつては1桁順位やAFCチャンピオンズリーグ出場圏内など、監督が変わる度に目標設定が変わっていたが、今はそういうブレは生じていない。もちろん、1シーズンに監督が2人交代するといった紆余曲折はあるにせよ、概ね改革は進んでいると思われる。