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【全日本大学駅伝】3強「青学・東海・駒澤」を困らせるのは“ポスト阿部”問題を解消した明治大学だ
text by
和田悟志Satoshi Wada
photograph bySatoshi Wada
posted2020/10/31 17:01
4年生の小袖英人がチームの中心。5000mで13分46秒56、1万mで28分34秒33の記録を持つ
明大の「ポスト阿部」問題
今年の明大は大エースが卒業したところからの出発だった。昨年度までの大黒柱で、前回の箱根駅伝7区で区間新記録を樹立した阿部弘輝(現・住友電工)だ。今季はその穴をいかに埋められるかが明大の大きな課題だったが、ここまでの戦いぶりを見れば、総合力で十分にカバーできていると見ていい。
大エースは不在でも、エース候補はずらりと揃う。小袖英人(4年)、鈴木聖人、手嶋杏丞(ともに3年)、加藤大誠、櫛田佳希(ともに2年)が今季の柱で、高いレベルで安定した成績を残している。
最上級生の小袖は、“ポスト阿部”の座を巡り、チーム内での競争が激化している現状をこう語る。
「監督やコーチをはじめ、いろんな人に“今年はエースがいないぞ”って言われるので、“自分がエースになってやるぞ”っていう気持ちでやっています。普段の練習では3年生、2年生が元気ですが、みんなで競り合っていて、本当に良い雰囲気。良い意味で去年よりもピリピリしているので、本当に駅伝が楽しみです」
“駅伝出場経験なし”の4年生が猛アピール
前述した2つの競技会では、明大勢が積極的に先頭を引っ張る場面が多かった。それが単に結果においてだけでなく、明大の活躍が目立った理由でもあった。
特に、出雲駅伝に向けてスピードを強化していただけあって、5000mでの存在感が際立った。それぞれの対校戦では異なる顔ぶれだったが、多摩川5大学では、加藤、手嶋、鈴木、主将の前田舜平と4人全員が13分台をマーク。トラックゲームズ所沢では小袖と櫛田がレースを組み立て、ともに13分台だった。勝負がかかった対校戦で、タイムも伴っていたのは大きな価値がある。冒頭の通り、出雲駅伝が開催されていたら、十分に優勝のチャンスはあったにちがいない。
2つの競技会で目立っていたのは、対校選手ばかりではなかった。オープン種目に出場した選手たちも奮闘していた。彼らは鮮やかなオレンジ色のユニフォームをまとっていたので、余計に目立っていた。特に、大保海士、長倉奨美、樋口大介といった、これまでなかなか駅伝に出場する機会がなかった4年生が、立て続けに自己記録をマークし猛アピール。全日本大学駅伝のエントリーメンバーにも名前を連ねた。
さらに、昨年度、三大駅伝を走った金橋佳佑(3年)と富田峻平(2年)も、いっそう力を付けた。期待のルーキー児玉真輝も、トラックゲームズで紫紺デビューを果たし、まずまずの走り。総合力は、昨季よりも今季のほうが圧倒的に高いだろう。