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ドラフト制度をどう思いますか? Jリーグのスカウトに聞いてみた「気乗りしないクラブで活躍は…」
posted2020/10/27 20:00
text by
杉園昌之Masayuki Sugizono
photograph by
Yuki Suenaga
今年のドラフト会議も無事終わり、クジの当たりはずれに翻弄されながらも選手たちの新たな道が決まりました。そんな運の要素が大きいドラフト会議をJリーグのスカウトたちはどう思っているのでしょう。今回は特別に過去の記事を再公開します。(初出:NumberWeb 2019年10月17日)
秋も深まる10月――。
全チームの監督がビシッとスーツを着込み、東京都内のホテルに一堂に会する。ピンと張り詰めた空気のなか、フロント陣と指揮官は一様に神妙な面持ちで円卓を囲んでいる。
静まり返った会場に関野浩之アナウンサーのよく通る声が響くと、一気に緊張感が走る。
「第1巡選択希望選手、浦和レッズ、旗手怜央、フォワード、順天堂大学」
客席がざわつくなか、少し間をおいて次の名前が読み上げられる。
「第1巡選択希望選手、川崎フロンターレ、旗手怜央、フォワード、順天堂大学」
言わずもがな、フィクションである。もしも、プロサッカー界にプロ野球のようなドラフト会議が導入されていれば、こんな光景が見られたのかもしれない。
自由競争のJは“両獲り”も可能。
Jリーグの新人獲得事情は、NPB(日本野球機構)とは大きく異る。
原則的には自由競争。クジで優先交渉権を得なくても、クラブはどの高校生、大学生とも交渉が許されている。例えば、今年の目玉である佐々木朗希(大船渡高)、奥川恭伸(星稜高)と交渉し、2人とも獲得することもできる。実際、川崎Fは、東京五輪世代となるU-22日本代表コンビの“両取り”に成功した。順天堂大の旗手怜央(4年)と筑波大の三笘薫(4年)は、“1位指名”が確実な人気銘柄と言っていい。
2人の逸材を獲得した川崎Fの向島建スカウトは、満足そうに笑う。
「もしもドラフトがあれば、2人を同時に取ることなんて、できなかったですね」