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【独占】「複雑なのさ、天才は」 マラドーナの5人抜きゴールをリネカーはどう見ていた?
posted2020/10/19 11:01
text by
フィリップ・オクレールPhilippe Auclair
photograph by
Getty Images
<翻訳・山中忍>
――周りの怒りに感化されたりもしなかった?
ガリー・リネカー(以下L):そもそもが「怒り」という感情とはあまり縁のない人間なんだけど、言い方を変えて、あの試合後に「歯痒さ」とか「不満」を覚えていたら、それは審判に対するものだったと思う。
明らかに主審の視界が選手たちに遮られていたのだとしても、線審にはシュートの瞬間が見えていたはずだ。実際、何年も後になってから当人も認めていたよね? ビッグゲームの雰囲気に飲まれて、フラッグを上げてファウルを告げる勇気が出なかったって。
ディエゴのやり方も巧かったけどね。それは認めなきゃいけない。同じ状況でも自分なら手を使おうなんて考えもしなかっただろうけど、何て言ったらいいのかな……そうだなぁ……ちゃっかりしていたと言うか"巧妙な手口"っていうことになるのかな? そこまで露骨ではなかったし、あの時点では自分も気づかなかったくらいだ。繰り返しになるけど、まだ相手ハーフのピッチにいたんでね(苦笑)。
自分が出た試合で目撃した中では……
――そして、あの先制点の4分後には「20世紀最高」とも呼ばれことになる、「5人抜きの独走ゴール」を決められた。
L:1点目の数分後に彼がやってみせたことは、さらに「絶妙」だったよね。自分が出た試合で目撃した中では、間違いなく過去最高のゴールだ。その重みを考えたら史上最高のゴールと言えるかもしれない。
何が凄かったのかと言うと、あの時のアステカはまともにサッカーをするのも苦労するほどで、そんな荒れたピッチでのプレーだった。だからこそ、あの2点目は余計に驚異的なんだ。