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【独占】「マラドーナに怒りを覚えたままの選手もいるけどね」リネカーが語る“神の手”真相
posted2020/10/19 11:00
text by
フィリップ・オクレールPhilippe Auclair
photograph by
Getty Images
<翻訳・山中忍>
――ガリー、時の流れは早いもので、キミが大会得点王に輝いた1986年メキシコW杯から34年。丁度ひと月違いの同い年で大会の最優秀選手に選ばれたディエゴ・マラドーナは、一足早く10月30日で60歳になる。
彼は、イングランドがアルゼンチンに敗れた(1-2)エスタディオ・アステカでの準々決勝で、両国間の対立の歴史に新たな因縁を加えた選手でもあるわけだけど、「マラドーナ」という名前を聞いた時に、今のキミの頭には、一体どんな考えが、そしてどんな人物像が浮かんでくるのかな?
ガリー・リネカー(以下、L):自分がプレーしていた時代で、最も偉大な選手だということ。これは間違いのない事実だ。
私生活でのトラブルや、時にはピッチ上でも物議を醸す行動があったことは周知の事実で、天才だからこそ完璧ではあり得ない人間の典型だと言えるのだろうけど、選手としての「ディエゴ・マラドーナ」には畏敬の念を抱かない方が不思議。
それほど、いわゆるワールドクラスの中でもズバ抜けた存在だった。背丈は、周りの選手たちに頭ひとつ以上抜かれていたっていうのに(笑)。それが、フットボーラーとして、あの抜群の才能!
ストライカーにとってタフな世界だった
――センターフォワードだったキミに対して、マラドーナはセカンドトップという違いはあったけど、同じストライカーとしてはどう?
L:僕らの時代は、ストライカーにとって今よりもはるかにタフな世界だった。彼の凄さを語るうえでは、その点も覚えておいてもらわないといけない。サッカーの歴史の中でも、当時のピッチほどストライカーにとって厳しい環境はなかったと言ってもいい。
試合では90分間ひたすら蹴られっぱなし。4、5回、ディフェンダーから手荒い歓迎を受けた後で、ようやく相手にイエローが出るというような感じでね。高い個人技や創造性の持ち主が、その才能を思う存分に発揮できる環境とは程遠かった。でも、ディエゴは、それをやってのけたんだ。