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【独占】「複雑なのさ、天才は」 マラドーナの5人抜きゴールをリネカーはどう見ていた?
text by
フィリップ・オクレールPhilippe Auclair
photograph byGetty Images
posted2020/10/19 11:01
約35年の時を経ても、燦然と輝くマラドーナの5人抜きゴール。リネカーの目にはどう映っていた?
本当のディエゴには、もっと……
――メキシコW杯でのイングランドとの一戦は、様々な観点からもマラドーナという選手のキャリアと個性を象徴するような試合だったと思えるけど、実際に彼の素顔にも触れた立場としてはどう思う?
L:確かに、あの試合が彼のサッカー人生を象徴していると言えなくはないよね。それはいろいろな意味で、そう言えるような気もする。彼の人生が投影されているような一戦。激しい浮き沈みはなく、勝者として試合を終えている点を除けばね。あの試合での彼には、実際の人生で経験しているようなアップダウンはなかったから。
それでも1点目のゴールには、どこか茶目っ気を感じさせる抜け目なさがあり、そして2点目のゴールには純然たる天才としての要素が凝縮されている。それで、彼にとって「ダウン」に当たる要素がまったくなかったわけでもない。だけど、それは僕のゴールでイングランドに1点が生まれた瞬間だけ。しかも、彼のチームがリードしているままで、最終的な勝ち負けにも影響はなかった。
だから、暗い影も存在する彼の人生そのものを象徴している試合とは言い切れないにしても、世界的なスーパースターだった彼の魅力と、良くも悪くも周りが驚くようなことをしでかすピッチ上での二面性は、あの試合から見て取れる……。と言ってみたものの、本当のディエゴには、もっと多面的な、幾つもの顔があるんじゃないかとも思える。
2つの顔だけじゃない。きっと複雑なのさ、天才は。
(前編も関連記事『【独占】「マラドーナに怒りを覚えたままの選手もいるけどね」リネカーが語る神の手ゴール』からぜひご覧ください)
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