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室屋成が去った右SB争いが熱い! FC東京“ふたりの中村”帆高&拓海、好対照な好敵手
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byGetty Images/J.LEAGUE
posted2020/10/08 19:00
中村帆高(左)と中村拓海。室屋成移籍で空いたFC東京の右SBのポジション争いは必見だ
拓海の攻撃センスは内田篤人を彷彿とさせる
一方、昨年はFC東京U-23の一員としてJ3で試合経験を積んだ中村拓海は、真逆のプレースタイルだ。
「拓海はマジでうまいんですよ」と帆高が評するように、拓海の特徴は攻撃面にある。マイボールのときにスルスルと攻撃に参加し、相手DFの嫌がるところにクロスを落とす。9月30日に行なわれた浦和レッズ戦ではGKとDFの間にグラウンダーのクロスを流し込み、決勝点をお膳立てした。
攻撃のビルドアップにも貢献できる現代的なサイドバックで、鋭い楔のパスを斜めにしれっと蹴り込む姿は、先日現役を退いた元日本代表の内田篤人を彷彿とさせる。
「攻撃のときの縦パスや上がっていく部分は、うまくやれているのかなと思います。ボールをもらって、相手の出方や位置を見て、効果的なところを自分で選んでやっているつもりです。目線もちょっと外しているので、読まれにくいかなって」
考えるタイプの帆高が思う、室屋と拓海
もっとも、ふたりが真逆なのは、プレースタイルばかりではない。
帆高は考え、悩むタイプ。大学の先輩であり、背中を追いかけていた室屋が8月に突如いなくなったとき、重圧に押し潰されそうになったという。
「成くんに少しでも近づきたいと思ってやってきた。成くんの凄さは近くでやっていた自分が一番よく分かっています。そんな成くんが抜けて、ワクワクよりもプレッシャーが凄かったです。ただ、成くんと比べられるのは当たり前だし、自分が突然うまくなれるわけじゃない。成くんは成くん、自分は自分。これまでどおり一歩ずつやるしかない」
そう誓った帆高だったが、すぐに壁を乗り越えられたわけではない。
「今は拓海という素晴らしい選手と争っていて。拓海が試合に出て、自分がベンチのときはすごく悔しいし、拓海が攻撃面で良いプレーをすると、自分もやらなきゃって。そうやって攻撃に意識を持っていかれて、守備がおざなりになってしまう時期もあって悩んでいたら、健太さんから『俺はおまえの堅実な守備を評価している。うまくやろうなんて思わず、自分らしさを存分に出してくれればいいから』と言われたんです。そこで自分が何をしなければならないのか再確認できました」