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室屋成が去った右SB争いが熱い! FC東京“ふたりの中村”帆高&拓海、好対照な好敵手
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byGetty Images/J.LEAGUE
posted2020/10/08 19:00
中村帆高(左)と中村拓海。室屋成移籍で空いたFC東京の右SBのポジション争いは必見だ
川崎相手の完封勝利も厳しい自己評価
くだんの川崎戦でも三笘や旗手怜央といった対面のアタッカーと丁々発止のバトルを繰り広げ、完封勝利に貢献したが、本人の自己評価はすこぶる厳しい。
「自分としては好き放題やられたという感覚で、最低限の自由を奪うとか、コースを切るとか、それくらいしかできなかったという想いが強いですね」
「緊張しないタイプ」の拓海は?
一方の拓海は、室屋の移籍をきっかけに出場機会が急増したが、「自分は緊張しないタイプですね」とあっけらかんとしている。
「成くんが移籍したとき、チャンスだなとは思いましたけど。帆高くんも試合に出ていたので、まずは帆高くんと同じ試合に出るとか、そこからだなと思っていました。試合に出られなくても落胆せず、やるべきことをやっていこうって」
さらに、こんなセリフをさらりと言ってのけるのだ。
「急に訪れるチャンスを逃さないための準備とかは、やっていたんで」
だからだろうか、長谷川監督から掛けられた言葉も、帆高とは大違いだ。
「監督から『調子に乗らず、謙虚にやれ』と言われたのが、心に残っています。調子に乗るタイプじゃないんですけど、そんな感じに映っているなら、そうなのかな。そこは毎試合意識して、浮足立たずにやろうと思っています」
好対照でも、掲げる目標はもちろん同じ
ルヴァンカップでは11年ぶりとなる決勝進出を決め、リーグ戦では現在2位に付けている。例年とはレギュレーションが異なる天皇杯への出場権を得られる可能性も高い。だから、好対照のふたりが掲げる目標は、同じだ。
「まずはタイトルが狙える状況にいることに感謝しないといけない。先を見ていても意味がないので、1試合1試合戦っていくだけですけど、東京のタイトル獲得に貢献したいと思っています」と帆高が誓えば、「まずは試合に出続けること。そのなかで、リーグ、ルヴァンカップ、天皇杯とチャンスがあるので、タイトルを獲りたいなと思っています」と拓海も言う。
見据える目標を考えれば、ルヴァンカップ準決勝を戦い終え、仕切り直しとなる10月10日のガンバ大阪とのリーグ戦が重要な位置づけとなるのは間違いない。この試合から、味の素スタジアムの入場者数の制限が緩和され、1万2000人となるのだから、なおさらだ。
首位を追走し、リーグ戦を最後まで盛り上げるための重要なゲームの相手が、長谷川監督の古巣であるガンバとなったのは、何かの因縁か。
そして、この一戦で指揮官が右サイドバックに起用するのは、果たして、どちらの中村か。