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夏はサッカー、冬はスキーに熱中…シュバインシュタイガーの少年期と、他競技経験のススメ 

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中野吉之伴

中野吉之伴Kichinosuke Nakano

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photograph byGetty Images

posted2020/10/01 08:00

夏はサッカー、冬はスキーに熱中…シュバインシュタイガーの少年期と、他競技経験のススメ<Number Web> photograph by Getty Images

スキーW杯の表彰式にも登場するなど、シュバインシュタイガーは長らくスキーにも親しんでいる

ハンドボールに転向したGKもいる

 クラブとしてのそうした姿勢は選手へのアプローチにも表れている。

 他のスポーツを取り入れるということは、他のスポーツへのリスペクトを持っているということでもある。SCフライブルク育成スカウトチーフのクリストフ・ベッツェルからこんな逸話を伺ったことがある。

「昨シーズン、うちのU-15には将来をとても嘱望されているGKがいたんだ。サイズがあって、正しいポジショニングを取る動きがスムーズで、インテリジェンスがある。クラブとしてはぜひとも上の年代チームでも残ってくれることを願っていた。

 ただ彼はうちでサッカーのGKをやっているのと同時に、ハンドボールチームでもGKとして活躍していたんだ。地域代表GKにも選抜されているし、そちらでも将来を嘱望されている。これまでは協力し合いながら、掛け持ちでやってきてもなんとかなっていたが、ここからはそろそろ専門性を絞るべき段階だ。

 争奪レース? いや、そうではない。僕らが彼に伝えたのはとてもシンプルなことだ。『クラブとして君のことをとても高く評価しているし、ぜひとも残ってほしいと思っている。でも君がハンドボールでも素晴らしいプレーをみせていることも知っている。どちらの道を選ぶのかは君自身であるべきだ。僕らは君の決断を受け入れて、リスペクトする』」

“1人の人間”としてリスペクトする

 クラブは彼を1人の人間として尊重し、そして彼も自分が本当に何をしたいのかという問いかけに1つの答えを出した。最終的にハンドボールを選んだ彼に対して、最後に次のような言葉をかけた。

「ハンドボールで頑張ってくれ。そしてもし、君がまたサッカーをやりたいと思う時がきたとしたら、その時はいつでも連絡してきてほしい。僕らは両手を広げて受け止めるからね」

 忘れてはいけないことだ。サッカークラブだからサッカーだけしていればいいわけではない。そしてプレーヤーズファーストとは、「プレーヤーの成長」を中心に置いて考えることを意味するのだから。

【次ページ】 大人のルールと修正に縛られてばかりでは

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