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投手転向1年で150km到達、赤上優人のスカウト評は? 成長を予感した指揮官の12年前の記憶
text by
永田遼太郎Ryotaro Nagata
photograph byKoeki Univ.
posted2020/09/30 07:00
投手転向後、急成長を遂げている赤上優人。東北公益文科大学として初のNPB入りを目指す
変化球も覚えた赤上のスカウト評は?
今年は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、4月から6月までの約2カ月間と、秋季リーグ開幕目前の8月に約3週間の自粛生活を余儀なくされ、プロのスカウトにアピールする場が限られてしまった。それでも秋季リーグ第5節の東日本国際大戦では、ここまで温存してきたというカーブを解禁して、この試合までリーグ戦7戦全勝だった相手に初めて土をつけた。
「大学2年まではクローザーとか中継ぎばかりだったので、最初から思い切り行く形で良かったんですが、先発だと相手も2巡目、3巡目と当たるので、ストレートばかりに頼っていると相手も(球筋に)慣れて、合わせてくると思ったんです。それとイニングを重ねるごとに疲れも溜まっていくので、本格的に先発を任された3年の秋以降はコースとか力配分とか変化球とかも意識しながら、練習でも試合でも投げるようにしました」
最速153kmのストレートだけでなく、最近は変化球で相手を抑える楽しさも加わったのだという。
そんな赤上の成長をプロのスカウトたちも認めている。千葉ロッテの柳沼強スカウトはこうだ。
「(指先に)かかったときのボールの球筋も良いし、今年は力感なく投げられている気がします。本当に良い球を放っていますよ。まだ細かいコントロールとか攻め方は勉強するところがありますが、球もまだまだ速くなるでしょうし、これからもっともっと伸びる選手だと思います」
ドラフトよりも「みんなで勝ちたい」
9月26日の東日本国際大戦には、千葉ロッテ以外にも巨人、埼玉西武、横浜DeNAなど計8球団のスカウトが集結した。
元内野手なだけあってフィールディングは軽快そのもの。牽制もターンが速い。横田監督が「何かひとつができなかったら『もっとやる』というタイプ」と評価するように、その貪欲な姿勢はプロの水にもあっさり慣れるだろう。
同大初のプロ野球選手誕生はもう目の前だ。赤上も次第に緊張感を感じ始めたようだ。
「正直言うとプレッシャーですね。石森さんが先に行ってくれた方が精神的にも楽でした。結構、周りからも期待されたり、応援してもらえたりするので(笑)。今は何も考えずに野球をやりたいし、大学最後の年なんで、ドラフトよりも『みんなで勝ちたい』って気持ちの方が強いです。どうしても、ここまで来るとスカウトの方が目に入りますし、意識はしちゃいますけど……」
胸の奥に潜む確かな手ごたえを隠すように、寡黙な青年は少し照れたように目尻を下げた。