球道雑記BACK NUMBER
投手転向1年で150km到達、赤上優人のスカウト評は? 成長を予感した指揮官の12年前の記憶
text by
永田遼太郎Ryotaro Nagata
photograph byKoeki Univ.
posted2020/09/30 07:00
投手転向後、急成長を遂げている赤上優人。東北公益文科大学として初のNPB入りを目指す
「今年こそは……」と期待する右腕
そんな横田監督が「今年こそは……」と期待しているのが、石森の1学年下の後輩、最速153km右腕の赤上優人(あかがみ・ゆうと)だ。
秋田県仙北市出身の21歳。赤上もまた入学当時はショートでプレーしていた。
「(赤上は)秋田の角館高校からショートで入って来たんですけど、彼が1年生のときには、上級生に彼よりも足が速くて肩が強いショートがいました。赤上も当時、ベンチには入れていましたが、彼をショートで使うには、足の速さ、スピードが足りなかったんです」
そんなとき赤上自身から横田監督へ直談判があった。
「ピッチャーで勝負できないですか?」
彼がまだ1年秋の頃である。横田監督が続ける。
「バッティングにも少し癖があったので、これを直すのであれば、いっそ彼の強肩を(ピッチャーで)活かしても面白いんじゃないかと」
そこで投手転向を視野に入れた1日限りのテストを決めた。赤上の内に秘めた才能が解放されるのを期待したのだ。
「高校時代は練習試合のダブルヘッダーでもちょこちょこ投げていたという話でしたので、それならちょっとやらせてみようかと。そしたら球速も140kmちょっと出てたんです」
羽黒高時代に出会った片山マウリシオ
横田監督には羽黒高校の監督をしていた12年前の記憶があった。エースとしてチームを甲子園に導いた片山マウリシオとの出会いだ。
「マウリシオも元々はショートだったんです。球速は137~138kmだったんですけど、赤上は彼よりも強い肩を持っていた。これがショートからピッチャーに転向すれば、ボールの強さはもちろん、ピッチャーインフィールドディフェンス(投内連携)も完璧だと思ったんです」
横田監督の勘はまたしても見事に的中した。赤上は投手としてメキメキと頭角を現し、投手転向後わずか1年で球速が150kmに到達した。
「彼の凄いところはこちらが黙っていても、誰よりも努力する子なんです。なかなかそういう子っていないじゃないですか。言われてからやるのが最近の子なので。彼は言われなくても、こちらがオーバートレーニングを心配しなきゃいけないくらい練習する子でした。それだけ意識が高いので、投手に転向して最初のひと冬で、体重も5~6kgくらい増えました。スピードも大学2年の夏には150kmを出せるようになったんです。そのとき『この子は凄い選手になるんだろうな』と感じました」