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内村航平「やっぱ、むずいな」 離れ技でミスも“1分間の鉄棒決戦”で五輪へ新たな一歩 

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矢内由美子

矢内由美子Yumiko Yanai

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posted2020/09/27 08:00

内村航平「やっぱ、むずいな」 離れ技でミスも“1分間の鉄棒決戦”で五輪へ新たな一歩<Number Web> photograph by AFLO

内村は東京五輪までの試合を「実験」と表現する。本番に向けた「ピーキング」のスペシャリストにとってどんなミスも意義のある糧だ。

期待の中、失敗しないでやるのも当然

 内村の言葉は複雑だが、客観的に出来栄えのみに目を向ければ見方は変わる。ブレットシュナイダーでは大きく乱れたが、直後に組み入れたG難度の離れ技「カッシーナ」は非の打ちどころのない質の高い実施で、その後に出した離れ技の「コールマン」と「ヤマワキ」も文句なしだった。コールマン後の車輪技(シュタルダーとび1回半ひねり片大逆手)で軸が少し流れたことを除けば、着地を含めた完成度の高さには静かな凄みすらあった。

 09年に初めて世界選手権男子個人総合で優勝して以来、つねに進化し続けてきた者としてのプライドをにじませるコメントもあった。31歳にして自身にとって全種目で最高であるH難度の技を試合で使ったことに対して聞かれると、「そこはあまり、考えていないですね」と、さらっとした口調で言った。

「今までもずっと進化し続けてきたと思うので、やるのが当然だし、期待されている中でも失敗しないでやるのも当然だと思っています」

1種目という難しさを考えている

 演技全体の総括としては「ちょっと悔しい気持ちが8割。あと1割はどうしてなんだろうというところと、もう1割はまあしょうがないかという気持ち」と語った。

「どうしてなんだろう」という1割は、1種目のみで100パーセントのパフォーマンスを出すための手順や方法をまだ習得していないことに対する疑問だ。内村は詳細をかみ砕くように説明する。

「6種目をやる中では、最初はトップギアに入れないんですよ。最初は2速くらい。そこから徐々にギアを上げたり、落としたりもしながら、最後の鉄棒でしっかりトップギアに入れるようにしているんです。でも、1種目だけだといきなりトップに入れることができない。どうにかできる術はないか。試合が終わってからずっと考えています」

 そして残り1割の「しょうがないという気持ち」は、試合勘の問題が影響したのではないかという考えからくるものだ。

「1年ぶりの試合だからできないのかというのも引っかかっています。だから、場数を踏んでいけばいけるものじゃないかとも感じています」と言うのである。

【次ページ】 宮地秀享との国内トップ争いは見どころに

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