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長谷部誠「喜怒哀楽を共にできることを」観衆と声援、ブーイングが戻ったブンデス開幕
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byGetty Images
posted2020/09/24 07:00
これまでの人員レベルを踏まえれば“6500人”はブンデスとしては物足りないだろう。しかし観客が戻った第一歩としてとらえれば、それは大きな価値がある
バイエルン戦は試合前日、急遽無観客に
18日、アリアンツ・アレナで行われたバイエルン対シャルケの開幕戦がそうだった。
16日の段階では7500人の入場が許可されていた。だが発表の翌日、ミュンヘン市内の新規感染率が10万人あたり34人から47.6人にも上がっているというデータが出てきたことから、急遽無観客に。さらにはケルン対ホッフェンハイムの試合も同様の理由で無観客試合となった。
誰だって観客のいるスタジアムでの試合を待ち望んでいる。「観客を入れるって言ったじゃないか」という気持ちだってわかる。でも今大事なのは「何をしたいのか」ではなくて、「何をしなければならないのか」なのだ。
バイエルンのフリック監督も「つねに新しい状況に新しく対応していくというのを学んできた」とメッセージを残していたが、優先順位を見誤らずに進んでいくことが大切なのだ。
この2試合が無観客だったのは残念だが、だからこそ残りの7試合を観客ありで開催できたということが、なにより大事なことだったのではないだろうか。ファンがいる日常を取り戻すことができた意味は大きい。
フランクフルトとビーレフェルトの一戦では、ファンの力を感じさせられたシーンもあった。
こだました「ヒンティーーー」の掛け声
ビーレフェルトに先制点を奪われたフランクフルトは62分、左サイドでパスを受けたフィリップ・コスティッチのクロスをニアポスト際でバス・ドストがヘディングで後ろに流し、ゴール前でアンドレ・シルバが相手DFと激しく交錯しながらヘディングで同点ゴールを決める。
この得点シーンの直前、フランクフルトは相手カウンターからピンチになりかけていた。ビーレフェルトFWセビオ・ソウコウが右サイドからスピードに乗ってドリブル突破を図ろうとするが、DFマルティン・ヒンターエッガーがその動きを読み切り、ダイナミックなスライディングタックルでボールを奪い取る。
次の瞬間、ファンからの大歓声があがり、愛称の「ヒンティーーー」という掛け声が野太くこだまし、さらにチームを後押しする声援が続いていく。これをきっかけにスタジアムの雰囲気がかわり、まさにそこからの流れで同点ゴールが生まれるたのだからサッカーは面白い。