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長谷部誠「喜怒哀楽を共にできることを」観衆と声援、ブーイングが戻ったブンデス開幕 

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中野吉之伴

中野吉之伴Kichinosuke Nakano

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posted2020/09/24 07:00

長谷部誠「喜怒哀楽を共にできることを」観衆と声援、ブーイングが戻ったブンデス開幕<Number Web> photograph by Getty Images

これまでの人員レベルを踏まえれば“6500人”はブンデスとしては物足りないだろう。しかし観客が戻った第一歩としてとらえれば、それは大きな価値がある

自然発生的に起こった大拍手とブーイング

 見慣れていたいつもの風景とは違う。7~8万人で満員のスタジアムが日常だったブンデスリーガだ。無意識下にそこと比べてしまう。3~4席ずつ距離を取って座らなければならないために、引きの映像で見たらそれこそ閑散としている。

 そんな隙間だらけの光景を見たら“寂しいなぁ”と感じてしまうのかもしれない。

 6500人という数字で見たら、多くはないなぁと思ってしまうのかもしれない。

 でもファンの力は、そんなネガティブな要素すべてを吹き飛ばしていった。

 1人ひとりから重なり合った音が、スタジアムのあらゆるところに反響して、熱気がどんどん膨らんでいく。拍手、クラブの名を呼ぶ音の1つひとつが、ピッチで戦う選手に力を与えていく。数じゃない。この日スタジアムに集ったファンは自分たちだけではなく、ここにくることができなかった、本当は周りにいるはずだった全ファンの思いとともに、愛すべきクラブのために駆け付けた人たちだ。

 チームマフラーをかかげて歌いあげるチームソング、スタメン発表でスタジアムDJが選手の名前を呼び、ファンが苗字を叫んで返すコールアンドレスポンス、ビーレフェルトのスタメン発表にはブーイング、選手入場に合わせて巻き起こる大拍手、そしてキックオフ前に自然発生的に沸き起こったフランクフルトコール。

「俺たちは、私たちは帰ってきた!」と、誇らしげで、喜びに満ちあふれていて、なかには感慨のあまり涙ぐんだりするファンもいて。スタジアムが鼓動を刻む。

スタジアムが果たすべき機能を取り戻し

 無観客での試合に意味がなかったわけではない。

 限られた環境下で次への可能性を手繰り寄せるために、そしてスポーツのある日常への第一歩として、とても大きな役割を果たしたのは間違いないのだ。それでもスタジアムの時計の針は、まだ止まっていたのかもしれない。

 そして今、スタジアムが果たすべき機能を取り戻すために必要な存在が戻ってきたことで、また動きだしたのではないだろうか。

 ファンの声援というのは、こんなにも力強く心を揺さぶるものだったのか。スタジアムに戻ってきた彼らの声力がストレートに響いてくるのを感じた。

【次ページ】 事態が沈静化しきっているわけではない

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