話が終わったらボールを蹴ろうBACK NUMBER

18年半続いた『やべっちF.C.』が終了 貢献度はMVP級! 選手に愛された2つの理由 

text by

佐藤俊

佐藤俊Shun Sato

PROFILE

photograph byTV asahi

posted2020/09/14 17:00

18年半続いた『やべっちF.C.』が終了 貢献度はMVP級! 選手に愛された2つの理由<Number Web> photograph by TV asahi

18年半続いた人気番組『やべっちF.C.』の終了が発表された。

やべっち、選手、クラブが三位一体となったユニークな企画

 矢部さんの存在とともに、『やべっちF.C.』がここまで支持されたのは、番組の企画にユニークなものが多く、魅力的だったことも大きい。

 シーズン前に放映される「デジっちが行く!」は、各クラブと選手のいろんな表情を捉えた冬の風物詩、名物企画になった。中村憲剛がそのシーズンのゴールパフォーマンスをお披露目したり、食事会場や部屋で主力選手の試合とは異なる表情や芸を見ることができた。また、知名度のない選手がネタを見せることで人気者になるケースもあった。「デジっち」を見て、その選手のファンになり、気になってスタジアムに足を運び、サッカーファンになった人も多いのだ。最近は、かなり凝った作りになり、クラブ対抗のネタ見せ企画のようになっていたが、この企画の影響力、期待感は大きかった。他にもリフティングの「宿題」、鍋を囲んでトークする「鍋っち」など多くのユニークな企画を生み出し、コアなサッカーファンだけではなく、小学生や若い女性などあらゆる層に響き、サッカーファンを増やしていった。

 こうした取り組みがJリーグに評価され、2013年にはついに「デジっち」がJリーグ公認企画に。コロナ禍の時には逆にクラブの方から「やれることがあれば、なんでも言ってください」という連絡が入ったという。やべっち、選手、クラブが三位一体となり、サッカー界を盛り上げていこうという姿勢が視聴者に伝わり、共感を得たのも番組が長く支持された要因のひとつだろう。

 それだけに、なぜ今、という思いもある。テレビ朝日は、「総合的な判断」ということで番組終了を発表している。

2020年で終了する「AFCとの放映権契約」を更新できなかった

 理由を考えてみると、たしかにここ数年、番組の視聴率が低調で苦戦を強いられていた。コロナ禍の影響で東京五輪が1年延期になり、スポンサー収入が減少したことも要因としてあるだろう。ただ、今回の番組終了の背景にあるのは、2020年で終了するAFC(アジアサッカー連盟)との契約を更新できなかったことが大きいのかもしれない。

 2001年にテレビ朝日はAFCと放映権の契約を結び、ワールドカップアジア予選、五輪予選などの試合を独占的に放送する権利を得た。その優良物件を有効活用するために、『やべっちF.C.』が生まれたともいわれている。実際に番組がスタートしたのは、翌年の2002年。日本代表を軸とした番組構成で他局との差別化を進め、テレビ朝日の「絶対に負けられない戦いが、そこにはある」というコピーとともに番組を盛り上げることができたのも、この契約あってのことだったのだ。

 だがスポーツ関連の放映権料が高騰し続け、ついに今年、テレビ朝日はAFCとの契約更新を断念。AFCは、来年から香港にあるスイスと中国の合弁企業「DDMCフォルティス」と推定総額20億ドル(約2100億円)で8年契約を結んだ。テレビ朝日とAFCの契約は4年間で約170億円程度。今回の契約が8年とはいえ、あまりにも高額すぎてテレビ朝日だけで対応できる額ではなかったのだ。

【次ページ】 サッカー界の裾野を広げてきた『やべっちF.C.』

BACK 1 2 3 NEXT
やべっちFC
矢部浩之

Jリーグの前後の記事

ページトップ