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「あなたが受け取ったメッセージは何ですか?」22歳の女王・大坂なおみは米国でどう評価されているのか
text by
竹田ダニエルDaniel Takeda
photograph byAFLO
posted2020/09/14 20:00
2年ぶり2回目の全米オープン制覇を成し遂げた大坂なおみ選手。
6月に平和的な抗議デモに参加するためにミネアポリスに出向いた。7月には非常にパーソナルな内容のオピニオン記事をEsquire誌に寄稿し、「自分の人生で何が実際に重要なのかを再評価しました。私は自問自答し、テニスができなかったら、私は何をして変化をもたらすことができるのだろうか?と考えた際に、私は声を上げる時が来たと決めた」と書いている。(https://www.esquire.com/sports/a33022329/naomi-osaka-op-ed-george-floyd-protests/)
そして8月、ウェスタン&サザン・オープンの準々決勝で勝利した後、黒人男性ジェイコブ・ブレイクさんが警官に銃撃されたことに抗議し、現地時間の26日に準決勝の棄権を表明した。
このとき、大坂選手は自身のツイッターにて、「私はアスリートである前に黒人女性です。今は私がテニスをする様子を観るよりも、重要なことがあると思います。また、白人が多数を占めるスポーツにおいて問題提起を行い、会話を始めることができれば、正しい方向への一歩だと思う」とコメント。彼女の後に続くように、多くの選手が声を上げている。カナダのミロシュ・ラオニッチは準々決勝に出場していたが、試合後の記者会見で大坂選手を支持。現代テニス界を牽引し、男女平等を訴え、差別撤廃運動にも尽力した人権活動家ビリー・ジーン・キングも、大坂選手の決定を支持するツイートをしたテニス選手の一人である。
「大坂なおみによる、スポーツ界の抗議運動を支持するための勇敢でインパクトのある行動。彼女は明日の準決勝でプレーする予定でした。選手たちがプラットフォームを活用することには多くの意味がある。沈黙してはいけません。#BlackLivesMatter」(https://twitter.com/BillieJeanKing/status/1298812323767947269?s=20)
大坂の棄権発表の直後、USTA、WTA、ATPツアーは大会を中断し、共同声明にて「人種的不平等と社会的不公平に反対する姿勢」を取ることを表明。国際テニス連盟も声明でサポートを表明し、大坂選手の名前にも言及した。
置かれた現状や社会の課題を批判するだけでなく、自身が持つ影響力や社会的責任と向き合い、問題提起をしながら行動を起こすこと。大坂選手の言動は、実際にスポーツ業界や他のスポーツ選手に大きな影響を与えただけではなく、世界中の視聴者にも人種差別について考えるきっかけを与えたのである。
アメリカでは大坂なおみの姿はどう映っているのか
こうした大坂選手の言動は、インタビューやメディア記事を通して「スポーツの世界にしか存在しない選手」ではなく、「思想や言論をしっかりと持った一人の人間」として世界へと伝えられている。その大きなリーチ力を持ったプラットフォームを活用して、社会問題と向き合い、発信を続ける努力は米国内では一般的に強く賞賛されており、米国代表でないに関わらず、全米オープンでは多くの視聴者が大坂選手に応援の言葉を送るという現象が見られた。