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「あなたが受け取ったメッセージは何ですか?」22歳の女王・大坂なおみは米国でどう評価されているのか
text by
竹田ダニエルDaniel Takeda
photograph byAFLO
posted2020/09/14 20:00
2年ぶり2回目の全米オープン制覇を成し遂げた大坂なおみ選手。
日本を拠点とする著名なアフリカ系アメリカ人の作家であり活動家でもあるバイエ・マクニール氏は、大坂選手をボクサーのモハメド・アリやの陸上競技選手のジェシー・オーエンスのような偉大な黒人アスリートたちに続く活動家だと見ている。
「モハメド・アリは、自分が不当だと思ったことや間違っていると思ったことに抗議するために自分のキャリアを危険にさらした。そして、なおみはその道を歩んでいると思う」(https://www.reuters.com/article/us-global-race-japan-tennis-osaka-featur/osaka-a-jesse-owens-of-japan-for-racial-injustice-stand-idUSKBN2630F4)
そして、日本でも「芸能人が政治的発言をするのはどうなのか」という議論が年々変化しているように、アメリカでは、影響力を持つ個人としてのスポーツ選手のあり方が常に変化し続けている。米国でも、かつてはスポーツ選手がスポーツ以外の主張をすることを好意的に捉えない人がいたのだ。しかし現在では、ほとんどのメディアやスポンサー企業がそれに対する変化を後押ししている。
「スポーツと社会」に対するブランドの向き合いは変化している
2016年8月当時、有色人種への差別や暴力への抗議を表明するために試合前の国歌斉唱中に起立することを拒否して跪いたことでNFLから事実上追放されたNFLのSan Francisco 49ersに在籍していたコリン・キャパニック選手を、2018年にNikeが広告に起用。その広告が最優秀マーケティング賞に選ばれ、Nikeの話題性やブランドイメージ向上に大きく貢献したことも記憶に新しい。もはや「スポーツ選手が社会問題に対して抗議をしたり発言をすること」は異例のことではなく、企業もスポンサードしているスポーツ選手の支援方法やBLM等についてどのように言及するか、積極的に模索を続け、スピード感を持って行動をとるような傾向が強まっているのだ。
大坂選手の優勝直後に、Nike Japanの公式ツイッターアカウントが「この勝利はじぶんのため この闘いはみんなのため」と書かれた画像を投稿した(https://twitter.com/nikejapan/status/1304909292928073728?s=20)。スポーツ選手としてコートの上で戦う選手像と、社会に蔓延る不平等のために声を上げ、行動を続ける大坂選手個人への敬意が込められており、「スポーツと社会」に対するブランドとしての向き合い方がメッセージとして強く伝わる。
特に自分が応援しているスポーツ選手は、その思想や言動も含めて応援したくなるものかもしれない。その心理状況を活用して、ブランドという一見無機質なものとスポーツ選手の結び目の延長線上に顧客を置くことで、より「人間的なストーリー」を描くことは可能だ。だからこそ、スポーツ選手の「人間的な部分」や「社会に対して抱くパッション」は否定したり隠すべきことでは全くなく、むしろ社会的な議論を前に進めたり、問題提起の認識を広めるための重要な役割を果たすとして米国では尊重される場合が多い。
社会的影響力を持つ大企業が、個人として大きな影響力を持つスポーツ選手をスポンサーとして支援する理由は、知名度の拡散だけではなくなってきているのだ。日本ではスポンサー企業が社会的メッセージを提示することは少ないが、SDGsへの意識が高まり、グローバル化が進んでいる中でより広い視野で社会問題を取り上げることが企業やメディアとしてメリットになる。