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大坂なおみ、セリーナ戦での品格 全米制覇は“Naomi Era”の幕開けに【2018年初優勝】
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byGetty Images
posted2020/09/13 10:00
幼いときからの憧れ“セリーナ”に勝って、グランドスラムを勝ち取った大坂なおみ。
「セリーナはスロースターター」
「セリーナはスロースターターの傾向があるので、最初から飛ばしていくことが重要だと思って」
その通り、第1セットはゲームカウント6対2とアッという間に先手を取ってしまう。
見事だったのは、第2セット第5ゲーム。第4ゲームでサービスゲームをブレークされたあと、流れがセリーナに行きそうなところを踏ん張ってブレークバック。
このゲームが終わってセリーナはラケット・アビューズに及び、自滅の道をたどっていく。
主審に謝罪を求め、「嘘つき」、「泥棒」と罵るセリーナを横目に、大坂は冷静そのものだった。慌てることなく、ゲームを締めくくり、初めてのグランドスラムを手にしたのである。
サービスゲームの徹底キープを実行。
精神的な安定がグランドスラム初優勝を引き寄せたが、プレー面ではサービスに男子的な発想を持ち込み、「サービスゲームの徹底キープ」を実行できるようになったのが大きな強みだ。
女子は男子と違い、体力的な要素も絡み、サービスゲームをキープし続けるのは決して簡単なことではない。大坂は昨年からサービスキープにフォーカスしてきたが、今年の全米オープンではその威力を発揮した。
ブレークされたのは、大会を通して5ゲームだけ。
1回戦のシージムンド戦で1ゲーム、4回戦のサバレンカで3ゲーム(この試合がもっともタフな試合だった。この試合を切り抜けたことが優勝につながった)、そして決勝でのセリーナの1ゲームだけだ。
特に準決勝のキーズ戦では13回もブレークポイントを握られながら、一度もブレイクを許さなかった。セカンドサービスの精度、パワーも上がっており、キーズが苦笑せざるを得ない場面もあったほどだ。
向こう数年、サービスゲームは大坂にとって最大の武器となるだろう。