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佐藤天彦と中村太地の未公開縁側トーク 藤井聡太の逆転は本当に“逆転”か?
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph byKazufumi Shimoyashiki
posted2020/09/12 11:50
学年は1つ違いながら、ともに88年生まれの佐藤(1月生まれ)と中村(6月生まれ)。四段昇進も佐藤が06年度前期、中村が05年度後期と、プロの世界を互いに切磋琢磨して歩んできた。
藤井の将棋をモーツァルトやピカソに例える
今回の対談のテーマはずばり「藤井聡太の強さの秘密」である。これからも競い合う相手であり、しかも自分たちより年下の棋士だ。
率直には語りづらいのではないかと始まる前は危惧していたが、そうした心配は無用だった。
佐藤は藤井の将棋をモーツァルトに例え、中村はピカソになぞらえて巧みに表現した。
将棋を詳しく知らない人間でもその強さが感覚としてわかった。そして、藤井の裏にある強さの根源にあるものへと話は進んでいったのだった。
その詳細については雑誌の記事をご覧いただくとして、ここで紹介するのはスペースの都合で雑誌には掲載しきれなかった未公開部分である。
藤井将棋の逆転劇についての話に始まり、現代の将棋とは切っても切り離せない存在となったAIについての2人の見解が述べられている。
「棋譜を並べてみて、あまり心地よくないのでは」
今回の特集の中では、他の棋士もAIについて語る部分があった。
中原誠永世名人は「ABEMAでは、AIによる形勢メーターみたいなのが表示されていて、私などはその数字に違和感をぬぐえないままで見ているんですが」と言い、谷川浩司九段も「AIのように今までの流れは考えず、現局面での最善手だけを求めるのは正しいのかもしれませんが、棋譜を並べてみて、あまり心地よくないのではという気もします」と語っていた。
佐藤と中村、30代の2人の思いも大豪たちの考えに連なるものに感じられる。
そして、それは藤井聡太が語った「今の時代においても、将棋界の盤上の物語は不変のもの」という言葉にも繋がっている気がするのだった。