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ネイマールと女王マルタが同一賃金? “男女セレソン平等”の実態は……
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph by(L)Kaoru Watanabe/JMPA,(R)Getty Images
posted2020/09/13 17:00
ネイマール(左)とマルタ。それぞれセレソンの10番を背負うエースだ。2人の“待遇”は同一になる。
厳密には正しくない“男女同一賃金”
このような状況で、女子代表の強化はなかなか進まない。男子がワールドカップで世界最多の5回の優勝を誇るのに対し、女子は世界の頂点を極めたことが一度もない。南米では最強なのだが、2004年五輪、2007年W杯、2008年五輪でいずれも準優勝したのが過去最高の成績だ。
このような現実があるだけに、今回のCBFの発表は驚きをもって迎えられた。
ただし「代表における男女同一賃金」という報道は厳密には正しくない。大会によって、主催者が提供する賞金が男女で異なるケースがあるからだ。
たとえば、五輪では優勝賞金が男女同額だから、今後、男女代表は同額のボーナスを手にすることになる。しかし、W杯では2018年の男子大会で賞金総額が4億ドル(約425億円)、優勝賞金が3800万ドル(約40億円)だったのに対して2019年の女子大会では賞金総額が3000万ドル(約32億円)、優勝賞金が400万ドル(約4億円)と男子の10分の1程度でしかなかった。
このためCBFは「同額のボーナス」ではなく「同じ比率のボーナス」という表現をしている。
ラピノーらが行動を起こす中で
ちなみに、日本国内における男女の格差はさらに大きい。天皇杯の優勝賞金が1億5000万円だったが、これまでの皇后杯の優勝賞金は300万円で、男子の実に50分の1。2019年大会から皇后杯の優勝賞金が1000万円に増額されたが、それでも15分の1にすぎない。
フットボール界における男女格差に以前から強く抗議しているのが、アメリカの女子選手だ。
2019年W杯で優勝したアメリカ女子代表のエース、ミーガン・ラピノーらはFIFAに男子と同額の賞金を要求する一方、昨年3月、「賃金や労働条件で男女差別をしている」としてアメリカサッカー連盟を連邦裁判所に提訴した。しかし、今年5月、訴えを退けられ、控訴している 。
一方でテニスの4大大会ではかつては女子の優勝賞金が男子の数分の一だったが、すでに2007年から男女同額となっている。