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ネイマールと女王マルタが同一賃金? “男女セレソン平等”の実態は……
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph by(L)Kaoru Watanabe/JMPA,(R)Getty Images
posted2020/09/13 17:00
ネイマール(左)とマルタ。それぞれセレソンの10番を背負うエースだ。2人の“待遇”は同一になる。
女子代表について、もう1つの重要な決定
フットボールで、現時点では男子の大会の方が女子より多くの注目を集め、観衆も多いのは事実だ。
2018年の男子W杯では一試合当たりの平均入場者数が4万7371人で、テレビ視聴者数が35億7200万人だった。一方、2019年の女子W杯では一試合当たりの平均入場者数が2万1756人で、テレビ視聴者数が11億2000万人。いずれも男子の3分の1前後だった。
それでも、過去の大会に比べて注目度が各段に高まり、アメリカ対オランダの決勝戦にでは約5万8000人の大観衆がスタンドを埋めた。男子大会との差は、着実に縮まりつつある。
“男女同一賃金”以外にも、CBFは女子代表に関して重要な発表を行なった。
元女子代表キャプテンのアリーネ・ペレグリーノを女子代表の競技責任者に、やはり元女子代表のドゥッダ・ルイゼーリを女子の全カテゴリー代表のコーディネーターに任命。監督を含め、これまでほぼ常に男性が占めてきた女子代表の要職が、すべて女性に委ねられた。
男女平等への動きが強化につながるか
ブラジルでは、2010年末の大統領選挙でジルマ・ルセフが女性として初めて当選し、2011年1月から2016年8月まで大統領を務めている。
とはいえ、男女平等が実現しているわけではない。ブラジル地理統計院の発表によれば、昨年の女性の平均賃金は男性より約22%少ない。
このような現実があるブラジルで、欧米の多くの国に先んじてフットボールにおける男女平等への動きが始まったのは、興味深い。
ブラジルのメディアと国民は、CBFのこれらの改革が女子代表の強化に結びつくかどうかに強い関心を抱いている。
それゆえ来年の東京五輪、そして2023年のW杯オーストラリア・ニュージーランド大会(両国とも協会が“男女同一賃金”を標榜している)での戦いぶりに大きな注目が集まる。
いつか女子代表が世界の頂点に立てれば――そのとき初めて、ブラジルは真の「フットボール王国」となるのかもしれない。