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ネイマールと女王マルタが同一賃金? “男女セレソン平等”の実態は……
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph by(L)Kaoru Watanabe/JMPA,(R)Getty Images
posted2020/09/13 17:00
ネイマール(左)とマルタ。それぞれセレソンの10番を背負うエースだ。2人の“待遇”は同一になる。
地位向上を訴え続けてきたマルタ
マルタは、女の子がフットボールをすることが当時タブーとされた貧しい農村で育ち、母親に隠れて男の子たちとボールを蹴った。同世代の男子と比べてもスピードとテクニックは傑出していたが、女性という理由で市が開催する大会に参加を許されず、悔し涙を流した。
それでも、貧困から脱出する手段としてフットボールで身を立てることを決意。14歳でリオの名門バスコダガマの女子チームに加入し、16歳でセレソンに初招集された。たちまちチームの攻撃の中心となると「ペレが王様なら、女王はマルタ」と言われるようになった。
その一方で、女子フットボールのさらなる発展と女子選手の地位向上を訴えており、2018年から国連の女性地位向上部門のアンバサダーとして積極的に活動している。
ブラジルで女性のフットボール人気は……
ブラジルは「フットボール王国」と呼ばれる。ただし厳密に言えば、これは「男子フットボールが強く、主として男性が男子フットボールに熱狂する国」ということだ。
男性でボールを蹴ったことがない人はほとんどおらず、フットボールを見るのもプレーするのも大好きだが、女性にはフットボールにあまり興味がない人が多い。
男子のフットボールは1933年にプロ化され、たちまち国技となった。
ほぼ1年中、ひいきクラブの成績に一喜一憂する。W杯ともなると、すべての大会がまるで自国開催であるかのように盛り上がる。大会期間中は誰もが熱狂し、仕事も勉強も手につかなくなる。国の機能がほとんど麻痺してしまう。
しかし、女子は1983年に タッサ・ブラジル(ブラジル杯)が創設され、2013年からブラジルリーグが行なわれているが、注目度は男子よりずっと低い。試合がテレビ中継されることはほとんどないからクラブには放映権料が入らず、大会にもクラブにも大きなスポンサーが付かない。
国内クラブ所属でフットボールだけで生活が成り立つ選手は一握りで、代表レベルの選手の多くは欧米のクラブでプレーする。