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クロップvs.ビエルサ、至高の90分 リバプールとリーズ“格差対決”が名勝負になったワケ
posted2020/09/14 18:00
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph by
Getty Images
あっという間の90分だった。
昨季王者リバプールと2部リーグ覇者リーズ・ユナイテッドによるプレミアリーグ開幕戦は、息もつかせぬ白熱の撃ち合いとなり、画面で観ていても時間の経過が実に早く感じられた。会場のアンフィールドは無観客だったが、もし以前のように大勢のファンがいれば、どんな盛り上がりを見せていただろうか。
致し方ないとはいえ、やはりそこは残念だが、いずれにせよピッチ上には至高のスペクタクルがあった。
戦前、リバプールのユルゲン・クロップ監督は「激しいアイデアのフットボール」が繰り広げられるだろうと話していたが、ここまで熾烈な攻防を予想していただろうか。ホームに昇格組を迎え、開始早々に先制点を奪うところまではノリッチとの昨季開幕戦と同じだったが、今回の相手はひと味違った。
幸運な判定(最新のルールではボールが選手の体に当たった直後に手に触れた場合はハンドリングにならないはず)で得たPKをモハメド・サラーが決めて(このエジプト代表は4季連続の開幕戦得点)、リバプールが4分に先制。ヨーロッパとイングランドを立て続けに制した“赤い常勝マシーン(Red Results Machine)”に先手を取られれば、少しは怖気付いてもおかしくはない。ところがリーズはまったく怯むことなく、自らも果敢に打って出る。
勇敢なビエルサ・リーズの同点弾
この日、65歳でプレミアリーグにデビューした名将マルセロ・ビエルサのもと、2年間みっちりと鍛え上げられたチームは、失点から10分と経たないうちに同点とする。
地元出身、下部組織卒業生のアンカー、カルビン・フィリップスが“ヨークシャーのアンドレア・ピルロ”の異名を証明するような鋭い高精度ロングフィードを左前方に送ると、ジャック・ハリソンがトレント・アレクサンダー=アーノルドとジョー・ゴメスをかわしてうちに切れ込み、右足のシュートでGKアリソンの右を射抜いた。