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「知らない選手ばっかり」ベテランも困惑した再開初戦、男子ゴルフ界は番狂わせのチャンス
posted2020/09/11 08:00
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph by
Yoichi Katsuragawa
あるベテランが、ささやいた。
「あいさつをしてくれるけど……知らない選手ばっかりなんだ」
日本の男子ゴルフツアーが9月、フジサンケイクラシックでシーズンを再開させた。新型コロナウイルス感染拡大の影響で1月の開幕戦SMBCシンガポールオープン以来、実に8カ月ぶり。当面はすでに中止された大会が相次ぎ、年内に関しては“月イチ、月ニ”といったペースでの開催になるとはいえ、前進を喜ぶ声は多い。
ようやく踏み出した一歩目の試合は、ある意味で異様な雰囲気だった。大会出場を控えた日本入国時の14日間の自主隔離措置を懸念し、海外在住選手が軒並み欠場。105人のフィールドで外国出身者は24歳のガブリエレ・デバルバだけで、彼もイタリア生まれ・国籍の兵庫育ち。同志社大出身で関西弁がペラペラである。
長くレギュラーツアーに身を置く選手たちにとって、顔なじみの外国人選手たちがいない。だから「知らない選手ばっかり」。彼らに代わって出場のチャンスが巡ってきたのは、年間のフルシードを持たない下部ツアー出身者、前年末の予選会通過プロたちだった。
2019年の同大会では参戦した120人のうち、年間出場権を持つプロは64人(53.33%/生涯獲得賞金ランク上位者、公傷・特別保障制度利用者など含む)。ことしは105人のうち、42人(40%)に減った。半数以上は、レギュラーツアー定着を狙う選手たちだったわけだ。
選手会長の時松「申し訳ない気持ちも」
政府の水際対策は、男子ツアー再開における最大の障壁だった。賞金シード選手65人のうち、31人を占める海外選手のことを無視できない。8月に在留外国人の再入国緩和措置が始まったことを受け、公式戦実施への一応の理屈は通ったが、隔離措置が影を落としたまま。
米国・英国などで実施されている、PCR検査などでの陰性証明に基づくプロアスリートの隔離免除の特別措置は現在、日本のスポーツ界にない。選手会長の時松隆光は「(ほとんどの)外国人選手が参加できない状況。ご理解をいただいたが、申し訳ない気持ちもあります」と胸の内を明かした。