話が終わったらボールを蹴ろうBACK NUMBER
停滞気味のヴィッセル神戸を救うのは、実はアイデアマンの古橋亨梧かもしれない。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byJ.LEAGUE
posted2020/09/07 18:00
昨年はチーム1/3の得点に絡む活躍を見せ、5日の湘南戦でも一番目を引いたのが古橋亨梧だった。
ゴールを生むための“お膳立て”も大事にしている。
後半8分の酒井のゴールも古橋が重要な“仕上げ”をした。サンペールから縦パスを受けた古橋がパスを受ける気満々の角度で入ってきた酒井に絶妙なタイミングのパスを出し、それが同点ゴールにつながった。ゴールが決まった瞬間、古橋は小さくガッツポーズをしていたが、サンペールからパスをもらう時からイメージ通りのプレーができたこと、そして周囲と連動してゴールを生んだ喜びがあったのだろう。
後半16分には、初瀬亮が出して流れきたボールをフリーで受け、決定的なシュートを放った。ゴール前に入った湘南DFのクリアで、惜しくも得点にはならなかったが、そういう場にいるポジショニングの良さも目立った。
古橋は、この日、1トップに入った藤本憲明とは異なり、ストライカータイプではない。得点とアシストという結果を残すことはもちろんだが、ゴールを生むためのお膳立ての仕事も大事にしているのが、プレーからも読み取れる。
例えば、攻撃のトリガーとなる動き出しのタイミングの良さ、早さは磨きがかかっている。
主力がいない時こそ、アイデアのある選手がチームを引っ張る。
「岐阜では僕の動き出しが早くて、ひとつためて動き出す事が多かったんですけど、神戸では他の選手が僕がボールを持った時、見てくれているし、むしろ僕に合わせてくれている。僕が動き出しを研究すれば、もっといいパスを引き出せると思うし、もっとチャンスに絡めると思う」
古橋がそう語るように、良い動き出しから攻撃をつくることで良い流れを生み、また積極的に仕掛けることで違いも生み出している。ゴールを奪うことを常に考えてはいるが、自らのアイデアを生かしてチームとして得点を生めば良しと考えているところもあるだろう。湘南戦、酒井のゴールに絡めた時、右手を挙げてのガッツポーズがそれを証明している。
チームは、なかなか勝ち切れず、上昇気流に乗れないが、負けていないことはプラスに考えることができる。停滞期から脱するには、古橋のようなアイデアのある選手がさらにチームを引っ張ることが必要になってくる。イニエスタらが戻ってきた時、また彼らの力に頼るのではなく、古橋が引っ張る力を示せば相乗効果で攻撃の破壊力は増す。
そのために必要なのは、自らがリーダーとしての自覚を持つことではないだろうか。湘南戦は、そういう姿勢がしっかりと見えた。
それが神戸を救い、チームを上位に押し上げるのはもちろん、古橋自身がこの先の海外移籍や日本代表で活躍することにもつながるはずだ。