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小川佳純が盟友・巻佑樹GMからの監督オファーに即答した理由。「ピクシーもそうでした」
posted2020/09/02 08:00
text by
杉園昌之Masayuki Sugizono
photograph by
FC Tiamo
驚くような再オファーが届いた。
「ズミ、監督に興味ある?」
今年1月、現役を続行するかどうか悩んでいた。ひと月前に選手として声をかけられたときは返事を保留。J1から数えれば、5部に相当する関西リーグ1部のクラブである。正直、気持ちは前向きではなく、プレーヤーとしてほかの可能性も探っていた。しかし、このときばかりは即座に反応。名古屋グランパス時代の盟友でもあるFCティアモ枚方(大阪)の巻佑樹ゼネラルマネジャーへ瞬間的に返答していた。
「監督ならやりたい」
昨シーズン限りでアルビレックス新潟を契約満了で退団した小川佳純は、未練なくスパイクを脱ぐことを決めた。この8月で36歳、それはプロキャリアの晩年からずっと考えていたことである。
「この選手は、あのポジションで起用したほうが、もっと生きるんじゃないかとか、自分のことよりもチームを動かすほうに興味を持つようになっていました」
選手の感覚が色あせないうちに。
2017年途中にサガン鳥栖から新潟へ移籍して以降は他チームの試合もよくチェックし、アンジェ・ポステコグルー監督が率いる横浜F・マリノス、ジョゼップ・グアルディオラ監督が指揮を執るマンチェスター・シティのサッカーに感銘を受けた。
気付いたことをノートに書き出し、メモまで取る。引退後の人生について考えを巡らせると、自ずと道は明確になった。チームの編成に関わる強化の仕事か、トップチームを率いる監督。もちろん、簡単にたどり着けないことは分かっている。トップチームのコーチ経験を積んだり、育成年代からステップアップしていく指導者も多い。その現実は理解しているが、階段を一段ずつ上がっていくつもりもなかった。
「コーチから段階を踏んでいく流れは否定はしません。ただ、僕は選手の感覚が色あせないうちに、トップの監督になりたかったんです。プレーヤーとしての感覚をすぐに伝えたかった。だから、こんなチャンスはないと思いました。チャレンジして得るもののほうが多いなって」